大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿29
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ちょ、くじ!!?
くじってことはあれですよ、人形と離れちゃう可能性があるってこと!?
いやむしろそっちの可能性の方がほとんどだから!
ダメー!!!
人形が食われちゃう!
今の人形なんてペロリだよペロリ!


「私2番ー!」
「お!人形上座だな。やったな!」


俺が頭を抱えている間に人形はすでにくじを引いて、早い番号が嬉しいのかはしゃいでいる。
山崎もはやくーなんて俺を見る人形。

くそ!こうなったら1番か3番だ!
うなれ俺の右手ー!!!


「37番だな。下座だ」


終わったあああああああ!!!

もう残された道は2番のまわりを監察方で囲む、あるいはクジの買収だ。
俺が顔をあげると人形はすでに宴会場へと入っていた。


上座初めてだ!とクジの紙を掲げながら、すでに準備されているお膳に乗せられた席番号を確認していく人形。
やがて入口から見て正面の上座付近にたどり着く。


「おそかったじゃねぇか人形」
「あ!沖田隊長ー」


すでに上座の一つには沖田隊長が座っていた。
浴衣に片膝を立てたあぐらで上座に座る沖田隊長は年齢に見合わずその位置が良く似合っている。
主に態度的な意味で。


「何番でィ」
「それがですね、初の上座!2番ですよ2番!」


元気にVの字を沖田隊長につきつける人形。
その瞬間俺は見てしまった。
凶悪なまでの笑みを作った沖田隊長を。


「なら俺の隣だ。俺が1番でさァ」


終わったあああああああ!!!!

さすが1番隊隊長ですね!なんておだてる人形の手を引いて隣に座らせる沖田隊長。
アンタさっき人形の風呂のぞこうとしてただろ!俺忘れてませんからー!
危険だ。危険すぎる!

そしてそこに副長が登場する。


「ったく、結局いつもと対して変わらねぇじゃねぇか」


手元の紙とお膳の上に置かれた紙を見比べる副長。やがて足を止める。
あの、その付近にいるってことは間違いなく上座ですよね。


「土方さん、何番ですかィ?」


まさか…まさかっ!?


「ああ?俺ァ3番だ」


終わったあああああああ!!!

向かって左から並ぶ沖田隊長、人形、副長。
もうね、囲まれてますよ人形さん。凶悪な笑みで舌なめずりをしながら獲物を狙う肉食動物に。


「総悟テメェわかってんだろうな」
「もちろんわかってまさァ土方さん。ここは一時休戦協定といきましょうや」
「まずは潰すぞ」
「がってんでィ。で、その後はどっちの部屋に?」
「テメェの部屋は角部屋だろ。ならそっちだ」
「了解しやした」


オイィィィィィ!!!
思いっきり協定組んでるよ!人形酒に酔わせてお持ち帰り協定組んでるよ!アンタら今の顔わかってる!?アンタらが犯罪者だよ!警察手帳返納しろー!

そんな会話には興味ないのか、話題の中心である人形は、お膳に乗せられた小鉢の蓋を開けて「おいしそー」なんて呑気に笑っている。

お前ももっと危機感もてー!!!!


俺が一人でうなっていると、会場が一気にざわつく。

局長の登場だ。
一応立場があるため、局長は最後に会場入りすることになっている。
ということは、これで全員そろったということか。


「みんな揃ってるな。おお!人形は今日は上座か!」
「そうなんですー!局長何番ですかー!?」


いつも以上にハートをまき散らしてる人形が膝立ちになって入口にいる局長に手を振る。

ちょっと待てえええ!
左右から一本ずつ手伸びてるから!
腰抱かれてるから人形−!
なんで気づかないのお前ー!!!


「はっはー!俺は今日は下座だぞ!38番だ!」
「さんじゅう、はち…?」


あは、はは、ははははは…。


「(シネ…ヤマザキ…)」


口パクで送られた呪詛が恐ろしいです。
そ、そうだ!めちゃくちゃいいこと思いついた!


「人形俺も上座行ってみたいなー。なんなら俺と席変わるー!?」
「え!?えええ!?いいのー!!!?」


カカカカッ!


俺の、前の、お膳に、箸が4本突き刺さっている。


「まさか公平なクジに不正をしようとは思ってねェよな山崎ィ」
「すいやせーん。ここ箸置き忘れてるみたいで、あと2膳くだせェ」


む、無理だ。


「トシの言うことはもっともだな。まあお酌して回っているうちに、席順なんて関係なくなるさ」


肩に手を置き俺をなぐさめる局長。
なんならアンタが「無礼講」とか言わなければこんなことにはなっていない。


「では、局長もそろったのでーはじめまーす」


司会役の幹事の一声でおのおのが自分の席につく。
こうして何の対策もできずに恐怖の宴会ははじまったのだった。



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