大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿28
3ページ/3ページ
普段の人形はニュートラルだ。
仕事モードにいつでも切り替えられる状態で、リラックスしていようと敏感だ。
寝ていても何かあればすぐに起きるし、変な気配にがすれば途端に纏う雰囲気が変わる。
仕事モードからニュートラルに戻す時は結構大変で、全身の神経がバンバンに働いているところをゆっくり時間をかけて戻す。
だから徹夜明けの人形は殺人鬼…。
しかしニュートラル状態が長く、それも比較的リラックス状態が続いた場合、ある一点を越えて「オフ」になるのだ。
オフになれば何が起きようとも寝続けるし、気配には鈍感になるし、警戒心は0。
簡単に言えば一般人とさほど変わりはなくなってしまう。
イコール。
無防備。
俺はこの男だらけの研修で人形がオフモードになってしまった事実に頭を抱えた。
「監察方で固めるしかない、か…」
ついたため息が白く撹拌する。
「おい総悟覗くぞ」
「わかりやした。とりあえず俺の踏み台になってくれやしませんか土方さん」
「いやいや土台お前だから」
って、オイイイイ!!!
「ダメですって二人とも!」
「どうせ殴られるんだ。なら一目拝んだっていいだろうよ」
「俺は殴られる前に土方さん盾にして逃げまさァ」
ダメダメダメダメ!
人形今殴るとかないから!
絶対はにゃ〜ってなって「一緒にどうですか〜」みたいなこと言うから!
「土方さんここに穴ありますぜィ」
「勇敢なる先人に感謝だな」
「待てェェエエエ!」
俺は壁板に張り付く二人を後ろから羽交い締めにした。
だけど時はすでに遅く、ついでに俺まで見てしまった。
髪の毛はアップにまとめ、頬は温泉とお酒で色づき、なだらかな肩がお湯を滑らせるその姿を。
「きょ、強烈…」
思わず鼻を抑える。
「よし総悟、とりあえず壁ぶっこわすぞ」
「わかりやした、温泉3Pですねィ。壁ぶち抜いたらまず俺が手ぬぐいで腕拘束するんで、土方さんは足よろしくお願いしやす」
「よしきた」
なんか意気投合してるしー!!!
「ちょ、みんな来てー!」
思わず助けを呼んでしまった。
すると音もなく現れた監察方の仲間4人。
忍頭巾はそのままで首から下は真っ裸で見事な鋼の肉体を晒している。
うわ、俺自分で呼んどいて萎えた…。
「副長、沖田隊長」
「何か御用でござるか」
「肌が見たいなら」
「どうぞご自由に」
板の前に陣取るフルチン。
「いや、スマン…」
「オエエエ!!!」
と、とりあえず助かったかな…?
END