大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿(22)
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人形が真選組を出てしばらくがたった。
屯所は沈むわけではなかった。沈む暇もなかった。
それほどまでに人形の抜けた穴はでかかった。
なんとか隙間をぬって山崎に人形を探させても、人形は見つからなかった。
里にもどったのではという俺に対して山崎は否定する。
忍としてやれなくなった人形が里に戻れるはずがない、と。
俺はいつぞやと同じようにフラフラと吉原を歩いていた。
己に向かって手を伸ばす女をみても何も感じない。
しかし、見世格子の奥に見知った黒髪を見つけた時、俺は格子にしがみついていた。
「人形…」
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