大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿(11)
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真選組副長、土方十四郎だ。

昨日も夜遅くまで仕事をやり眠ったのは深夜三時すぎ。
重たい頭を無理矢理起こして食堂についた。

食堂ではいつも通り隊士達が他愛がない話をしながら朝食をとっている。
ふと、黒い隊服の中で落ち着いた小花柄の小紋が目に留まった。


「今日は休みか人形」
「副長。お早うございます」
「ああ」
「ええ久しぶりにお休みです」
「そうか」


自然に人形の隣に腰かけると膳をおいてマヨネーズをとりだす。


「どこか出かけるのか?」
「ええ鍛治屋さんに」


ここで男と逢うっつったらびびるが、年中近藤さんを追いかけまわしている人形のことだ。それはない。
まぁこいつらしいな…。


「ではお先に失礼致します」
「ああ」


あー俺も休みてぇ。
あいつ休みの時はいつもあの小紋だからな。
潜入だったらもっと派手な若い奴が好みそうなやつ着るし。

市松人形ってのはマジで女っ気ないやつだ。
真選組の隊士なら口を揃えて言うであろう言葉。
いい歳こいて浮いた話一つねぇ。(近藤さんは別として)
部屋も女らしいものといったら潜入捜査でしか使わないであろう化粧箱一つ。
そして唯一持ってる小花柄の小紋。

行き遅れなんてふざけて罵ったりするが、近藤さんが関わらなければあいつは美人で器量よし。まだまだ子供だってこの先何人も産めるだろうし結婚だって十分間に合う。むしろこれからだって言う奴もいるくらいだ。
何考えてこんなむさ苦しい男所帯で監察なんざやってるんだか。

だが事件は起きた。














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