大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿49
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真選組副長土方十四郎だ。
年末のくそ忙しい勤務形態が続く。いつもよりさらに忙しく感じるのは一人重要な人物が欠員しているということもある。
正直早く復帰してほしいが、しっかりと休んでもらいたいのも事実。

そんな中現れたとっつぁん。

「お前ら歌舞伎町のパトロールいくぞー」

とにかくとっつぁんのねぎらいにより俺たちはすまいるに連れてこられたわけだ。
俺らのねぎらいっていうより自分が行きたいだけだろ。

ちなみに例の映像をとっつぁんに提出した時には事態が事態なだけに何事もなかったが、例の事件が収まった後に俺、そして珍しく総悟もとっつぁんから半殺しの目にあっている。


「いや〜今日も別嬪ばっかで嬉しいねぇー」
「いやーんパパ待ってた〜」
「今日もいっぱい飲んでね〜」
「もちろんよーパパがんばっちゃうからねー」
「キャー!パパ最高!」


とっつぁんはいつも通り両手にすまいるの女どもを侍らして早速一番良い席へと進んだ。

そして近藤さんはというとキョロキョロと落ち着きがない。


「お妙さああああああん!!!」
「いらっしゃいませ近藤さん」


ん?いつもと違う。
近藤さんが強烈なカウンターをくらわない。今までそんなことあったか?
なんならあのゴリラ女が近藤さんのテーブルについている。俺の中の勘が危険を知らせているのは気のせいか。


「とりあえず座りやせんか土方さん」


未成年のくせになぜかついてきた総悟に声をかけられる。お前はサボりてェだけだろ。
しかし総悟もすまいるに漂う微妙な違和感を感じ取ったのか、その左手は腰の獲物から離れない。

すまいるの中はとっつぁんのテーブル、近藤さんのテーブル、俺と総悟のテーブル、山崎ら他の隊士達のテーブルがちらほら。まあ順当に言ってそうなるだろう。それぞれのテーブルで酒が準備されて乾杯が始まる。
俺は万が一のことを考えてビールを断り、代わりにウーロン茶を頼んだ。








乾杯が終わりしばらくたったが、特に変化はない。女の話に適当に相槌を打ちつつ、周囲に視線をやるがどのテーブルでも酒やら話しやらが進んでいる。


「6番テーブルヘルプお願いしまーす。山田さんでー」
「はーい」


さすがこの時期は夜の店も繁忙期なだけあってキャバもよく入れ替わる。


「「「ブーーー!!!」」」


少し離れたところにいる山崎達のテーブルでなぜか水しぶきが上がった。いや、色からしてビールか。
ソファーの背中越しであるため様子はわからないが、かなり騒々しい。

そして、キャバ嬢たちがそちらを気にしている。

それは何が起きているか探るような視線ではなく、どちらかと言うと何が起きたか知っており、それを確かめるような視線だ。
時折女同士が目配せをしているのがわかる。巧妙に隠しているようだが。


「何を隠してやがる」
「え?何がですか?」
「さっきから落ち着かねェぞ」
「え?そんなことないですよ?」
「考えろ。相手が悪ィんだよ」


総悟はそれまでチョコ菓子を食べていたが、俺の言葉によって場の空気が変わったのを感じると再び自分の獲物に手をかけた。
もちろん馴染みでもあるこの女どもを斬るつもりは毛頭ないが、職業病と言ってもいいだろう。


「呼んじゃう?」
「えーもう?せっかくだからここぞのタイミングまで出し惜しみしたかったのにー」
「いいじゃないメインはあっちのテーブルだし」
「それもそうね」


もはや隠すこともせず会話をする女たち。何か俺たちにはわからないことを話して納得をすると、そのうちの一人が立ち上がって黒服に手を振った。


「すみませーん!3番テーブル山田さんヘルプお願いしまーす!」
「はーい」


女は俺たちにあらためてビールを注いだ。


「何か怪しいことをしているわけじゃないですよ。だからいつものように呑んでいってください」


確かに女たちの空気がいつものに近いものになった。


「いいじゃねェですか土方さん。何かあったら俺が対応しまさァ」


再びチョコ菓子を食べ始めた総悟にも促されて俺はグラスを手に取った。


「失礼しまーす。ヘルプ入りまーす」


キャバ嬢にしては落ち着いた声が注いだ。
足音もなく現れたその人物を見た瞬間…


「ブーーー!!!」

「臨時スタッフの花子ちゃんでーす」
「どうも花子でーす」
「こりゃ面白ェこともあったもんだ。うちの組の誰かさんにそっくりだ」

「人形ー!?」


いつぞやのお見合いの時のような格好の人形がいた。





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