大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿48
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こんにちは。
万事屋従業員の志村新八です。
今日は姉上と神楽ちゃんの付き添いで華道教室に来ています。近くの公民館で無料体験が開かれるということで、飛び付いたわけです。
いや、ね、無料ですからね。


「こんにちは。人形さん」
「あ、お妙さんこんにちは。今日はお誘いありがとう。神楽ちゃんも新八君も今日はよろしくね」
「マミー!」
「え?人形さんも一緒なんですか?」


よくお休みとれましたね、と言う僕に人形さんは笑って頷いた。


「ほら、今一応お仕事禁止だから」


すぐに納得する僕と神楽ちゃん。姉上は頭?マークを浮かべていたけど。確かに人形さんは今日は着物を着て、尚且つ髪の毛を一纏めにくくりあげていた。普段あまり見かけない女性らしい姿に思わず頬に熱が集まってしまう。


「姉御!マミー!早くするネ」


神楽ちゃんは二人の手をとるとさっさと公民館に入っていった。
というか、姉上と人形さんは一応恋敵?のはずなのに、いつ仲良くなったんだろう。





「それでは皆さん準備をしましょう。お着物の方は袖をまくって、お花を切る用のお水も準備してくださいね」


先生の合図で全員が椅子から立ち上がった。本格的な華道ではなく、あくまでも体験であるため調理室を借りて行われている。
僕はいつも万事屋でやるように着物の袖をたすき掛けする。姉上も同じようにまとめている。


「マミーやってヨ」
「袖は引っ掛からないから雰囲気それっぽくするだけでいい?」
「それでいいネ」


人形さんは誰よりも早くたすき掛けを終わっていて、今は神楽ちゃんの我が儘に付き合っている。
神楽ちゃんはいつものチャイナ服だから、たすき掛けだけやってもらっていた。
神楽ちゃんも女の子なんだなー。


「ボールに水汲みましたよ」
「あら新ちゃんありがとう」


たすき掛けついでに神楽ちゃんの髪の毛を直してあげている人形ちゃん。すごく微笑ましい。

パンパン

「皆さん準備は出来ましたか?」


僕たちは一度席について前の先生に向き直した。


「まずは好きなお花をとって、丁度良い大きさにカットします。カットするときは水の中で斜めにカットすると、お花が長持ちしますよ」


先生は見やすいようにガラスボールに張られた水の中で大きな白百合の茎をカットした。


「葉っぱは切ってもいいし、このように擦るとカーブが作れるのでそれを利用してもいいですよ」


おー。
大きな葉っぱを先生が撫でるように擦ると真っ直ぐだった葉っぱは大きなアーチのように垂れ下がった。
結構華道も面白いかもしれない。


「マミー早くやりたいアル」
「しー。神楽ちゃん、もう少し待ってね」


ステンレスの机を挟んだ反対側にいる二人は本当の親子みたいだ。可愛い。純粋に可愛い。


「それではお好きな剣山、お好きなお花を自由に使って自由に表現してみてください」


僕たちは今度こそ立ち上がり、華道の体験を始めた。





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