大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿45
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その日土方は通常の勤務を終えると着流しに着替え、馴染みの居酒屋に足を運んだ。外は冷えていたが、逆にその冷えの中熱燗を味わうのも乙なものだと考えたのである。
「親父ーいつものと熱燗、あと適当に作ってくれ」
「あいよー」
すでに顔なじみとなった店主に挨拶代わりの注文をする。店主も上機嫌に応えるとすぐに作業に取り掛かった。
土方は適当にカウンターに腰かける。
「親父ーいつものねー。あと温燗。あと適当に」
「げ」
「うげ」
思わず声が漏れた。自分の隣の椅子が引かれたら勤務後の疲れた体では決して見たくない銀髪があった。
相手も自分の顔を見るとしかめっ面になるが、一瞬でだらしのない顔つきになる。嫌な予感がする。
「偶然だねー土方くーん。俺今金ねぇの、相席失礼しまーす」
「カウンターで相席もくそもあるかよ。金ねェなら来るんじゃねェ」
「あれ?いいの?前回の捜査協力の報酬は?」
喉の先で舌が鳴った。現れた銀髪、万事屋の社長坂田銀時は何も言わなくなった土方に許可を得たと確信し、引いたその席に座る。
「はいよ、土方さんは熱燗。銀さん温燗ね」
二人はカウンター越しに徳利とお猪口を渡されて受け取る。続いておしぼりも。
「その後はどうなったのよ、例の女」
「ああ?一般人にペラペラ喋れるかよ」
「ふーん。ま、いいけど」
熱々のおしぼりが指先を温める。店主からのお通しを受け取ったところで再び入口の引き戸が引かれた。
「すいませーん、席空いてやすか?」
「あーカウンターでいいなら空いてるよー」
聞きなれた口調と声。振り向かなくてもわかる。
「あれ?旦那に土方のヤローが仲良く酒呑んでらァ。一体全体どうしたんでィ?」
「たまたまだ。それよりお前こそ、まだ勤務時間だぞ」
「別に俺は夕飯食いに来ただけで、酒呑みに来たんじゃねェですから」
「そういやあ沖田クンまだ未成年だっけ」
沖田は特に気にすることもなく空いていたカウンター席、銀時の右手側に座る。女将からおしぼりを受け取ると、簡単な丼ものを注文した。
「そういやあ旦那。この間はありがとうごぜェやした。礼を言うのがおそくなっちまった」
「何?捜査のこと?」
「もちろんそれもですが、土方のヤローの顔面に2発、最高でしたぜィ」
「ああそれ!結構イイとこ入ってたでしょ?俺その後見逃しちゃったんだよねー」
「あ、携帯の写真でいいならありますぜ。3日後の一番腫れてる時のやつ」
「え?まじ?見せて見せて」
二人を無視して呑むことを決めていた土方だが、聞こえてくる会話に自然と青筋が浮かぶ。
「これでさァ」
「ぶは!ヤベェ!土方クン超イケメンになってんじゃん」
「それでこっちが5日後」
「テメェらいい加減にしやがれ」
危うく抜刀寸前の土方を、銀時と沖田はそれはそれは良い笑顔で見た。
その後料理をつまみつつなんやかんや喋り、それなりに良い空気がつつんでいる。
ふと、銀時は天井近くの高い位置につけられているテレビを見た。
そこでは最近良くみかけるようになった駆け出しのグラビアアイドルがこれ見よがしの水着でクイズに答えている。
体も温まり、良い気分だ。
なんとなく、酒の肴として湧いた疑問を口にしてみた。
「なあ。理想のおっぱいの条件って何だと思う?」
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