大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿44
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どうも、真選組監察方山崎退です。
現在は深夜2時。夜勤の隊士もパトロールに出かけたのか、屯所は静まり返っています。


「いくよ山崎」


目の前には忍装束に身を包んだ人形。かくいう俺も同じように真っ黒な潜入用の装束に身を包んでいる。
人形は髪を高い位置で一つにまとめると、口布をあげた。俺もうなずいて応えると、その場にしゃがみこむ。
人形が肩に足をかけたことを確認すると、体を起こして立ち上がる。

カタン

肩車の体勢で天井の板を外した人形はそのまま腕の力で上半身を滑り込ませると、俺の肩を土台にして登りきった。


「山崎」
「はいよ」


天井裏から伸びた人形の腕をつかみ、反動をつけて俺も登った。
俺は先導をするため人形を抜かすと、腰のポーチに収めていた小さな懐中電灯を出す。首を捻ればかちり、と音がして明かりが灯った。
口に咥えると体勢を低くして進む。人形が後に続く。

俺の持つ懐中電灯の小さな明かりだけを頼りに、ひたすら先へと急ぐ。


「止まって」


人形を手で制す。わずかだが光に筋が見えた。おそらくトラップ用のワイヤーだろう。
懐中電灯を手にもち、慎重に照らせば、透明がきらりと光って糸が見える。
仰向けになると、ワイヤーにひっかからないように足を擦って這い出た。


「人形、手」


先に抜け出た俺が今度は人形に手を伸ばす。人形が俺の腕をとったのを確認して、引っ張った。
するりと床をすべって勢いよく俺の腕に収まった人形を抱きとめる。

むに

手のひらに柔らかい感触がして心臓がはねる。なんてタイミングのラッキースケベだよ!


「わざとじゃないよ!」


振り返って睨み付ける人形に対して両手を挙げた、が。

ドカッ

エルボーをくらった。
痛みにうずくまって悶える俺から懐中電灯を奪うと、人形は口布を下げてそれを咥える。
俺は脇をさすりながらそれに続いた。






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