大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿30
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どうも。真選組一番隊隊長沖田総悟でさァ。
土方のヤローの乾杯の音頭で始まった宴会はさっそく盛り上がってやす。
とりあえず飲み放題なのをいいことに、しこたま人形に呑ませるとしまさァ。
一応今は休戦協定中なんで。
「人形。今日は俺が酌してやりまさァ」
「え?いいんですか?」
瓶ビールを片手でつかむとあわてて人形が自分のグラスを空にする。
「すみません。私ばっかり」
「おら人形。俺からもだ」
「あ、副長!すみません!」
人形を挟んで反対側にいる土方さんが同じように瓶ビールを傾ける。人形はあわてて俺が注いだばかりのグラスを空にした。
一人で呑ませ続けるのは厳しいものがあるが、二人がかりならこうやって交互に呑ませ続けられる。
これが休戦協定の理由でさァ。
土方さんと目が合いお互いほくそ笑む。
「人形、今日は飲み放題ですぜ。せっかくなら他のも頼んだらどうでィ?」
「えーいいんですか?」
人形は俺が渡したドリンクのメニュー表を見る。ビールは炭酸で腹が膨れるわりにアルコール度数が低いから非効率的だ。
「うーん、焼酎のお湯割りかなぁ」
焼酎はお湯割りにしてしまうと結局はアルコール度数が下がってしまう。
何とかメニューを変えさせようとすると土方さんが口をはさんできた。
「おい人形。ここはワインが美味いらしいぞ」
「ワインですか?呑みたい!お姉さーん!赤グラスで1つー!」
「何ケチくせぇこと言ってやがる。お姉さんすんませーん!グラスじゃなくてボトルでー!」
「ええ!?そんなに呑めませんよ!」
「誰もお前一人で空けろっつってねェだろ。俺も呑む」
それならいいかー。と納得し、料理をつまむ人形。その奥で土方さんが力強く俺に向かって親指を立てた。もちろん俺も返しまさァ。
今だけは褒めてやりやす土方さん。
しばらくして赤ワインのボトルとグラスが運ばれてきた。
土方さんが手ぬぐいをコルクにかぶせ、親指に力を込める。軽快な音がしてコルクは簡単に開いた。土方さんはそのままの流れで2人分グラスにワインを注いだ。
ビールとも違う濃厚な香りがただよう。
「ほらよ人形」
「ありがとうございますー!それじゃあ改めましてかんぱーい!」
「乾杯」
そりゃあ人形がワインを呑んでくれるのはありがてェことなんですがね。
何か俺だけおいてかれたみたいでつまんねェ。
「人形俺には乾杯はねェんですかィ?」
「え!?沖田隊長ごめんなさいー!」
俺の拗ねたような言葉にあわてて人形がこちらを振り向き「かんぱーい!」とワイングラスをオレンジジュースに合わせてくる。
「なんか今日の沖田隊長かわいいですねー。一人だけジュースでさみしかったですか?」
図星に近い所をつかれてむかついたがそれよりも今日は大切なことがある。
「その通りでさァ。だから人形、俺の代わりにたくさん呑んでくだせェ」
「じゃあ沖田隊長の分もがんばりますね!」
ぐいっとワインにあるまじき呑み方をする人形を見て俺は土方さんに親指を立てた。2倍力強く返ってきた。
「おー!みんな呑んでるか?」
人形がハイペースになってきたとき、正面から近藤さんが歩いてくる。右手にビール、左手に返杯用の空のグラスをもっているあたりさすがですぜィ。
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