裏文章

□スパイスは如何?〜立花の場合〜
1ページ/7ページ

ここは毛利の家だ。
だが今ここに家主の元就はいない。
息子夫婦に呼ばれたらしく、急遽出ていったのだ。

ここは書籍が多く、騒がしくもない。勉学に励むにはうってつけだ。

そんな訳で、宗茂と一緒に休みの間の留守番を任せられた。
寮母のねね殿には了承済みだ。

私は一人、すっかり冷めた茶をすすりながら、晩ご飯を何にしようかと冷蔵庫の中を見た。

と小さな小瓶が目に映った。
中身は透明な液体。瓶には「愛の調味料」と何とも胡散臭いことが書いてあった。

胡散臭いが、ここの台所は孫の輝元が仕切っている。元就至上主義の輝元が、そのように危ない物を台所に置いておくだろうか。

いや、無い。

胡散臭いながらに好奇心に負けた私は小瓶を開けた。
特にこれといった匂いもなく、舐めてみても味も無いようだ。

調味料、なのにか?

訝しんだ私はそれが何なのか気になり、飲みかけの茶にボチャボチャと景気良く入れて、一気に飲み干した。
やはり味に変化は無いような…。

小首を傾げながら、空になった茶碗を流しに浸けると、ぐらりと視界が傾いだ気がした。
それから訪れる体の変化。
暑い。息苦しい。
あまりの暑さに汗が滲み、息が上がる。頭がぼうっとしてきた。
シャツのボタンを2つ程開けて肌蹴る。

すると玄関から聞き慣れた声が聞こえた。宗茂だ。
宗茂の姿が目に入ると、私の視界は真っ白になり、珍しく慌てたような宗茂の声が聞こえた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ