裏文章

□祭りの後。
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祭りが終わって私と宗茂は寮に戻った。
迷子になったりと慌ただしかったが、それなりに楽しかったと思う。

私は着替える為に自分の部屋に戻ろうとしたが、宗茂の部屋へ強引に引っ張り込まれた。
宗茂は部屋の扉を閉めると後ろ手に鍵を掛けた。思わず嫌な顔をしてしまった。
そして私の浴衣の帯に手をかけた。なんだか嫌な予感がして私もすかさず帯を掴めば、自然引っ張り合いになる。

「…何のつもりだ」

「何って…悪代官ごっこ」

こいつは本当に予期せぬ動きをする。

こいつが言っているのは、時代劇に出てくる悪い代官が町娘を手籠めにする際、よいではないかと言いながら勢い良く帯を引きはがすアレだろうか。

あんな事態になってたまるか!私は帯を握る手に力を込め宗茂を睨む。

「放せ、ふざけるな!」

ぐいぐいと自分の帯を引っ張ると、宗茂はあっさりと掴んでいた帯から手を放した。
私は引っ張っていた勢いで後ろによろめき、壁に後頭部を打ちつけた。

思わず痛みに頭を抱える私の帯を、こいつは思い切り引き抜いた。
着物の帯のように長くない半幅帯だが、勢い良く帯を引っ張られて俄かによろめけば、宗茂に抱き留められた。
じんじんと痛む後頭部に涙目で宗茂を見上げれば、端正な顔にいつも通りの笑みを浮かべている。否、目が笑ってない。

シュッと衣擦れの音がしたかと思うと、呼吸が楽になった。腰紐を一本解かれたことに気付き、慌てて肌蹴る胸元を押さえる。
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