裏文章

□その本は…
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ここ、豊臣学寮で生活をするようになって随分経つ。俺は何時もの様に清正達と風呂に入り、自室へと戻った。
部屋の扉を開けると客が来ていた。

「ギン千代、来てたのか。どうした?」

そう声をかけるとキッとばかりに睨まれた。

「貴様、よくもぬけぬけと…このようなっ恥ずかしくないのか!」

「なんのことだ?」

ギン千代は何を怒っているのか。心当たりが無い俺は小首を傾げる。

「しらばっくれる気か!」

そうは言われても本当に思い当たらない。

「しらばっくれるも何も現状が把握できないんだが」

そこまで言うと、ギン千代が本を手にしていることに気がついた。
ギン千代の腕を引き、抱え込んでその手から本を取り上げパラパラ捲る。

「…なるほど」

その本にはほとんど文字等は記されておらず、大半が絵で埋められていた。裸の男女が絡みあっている絵だ。
数少ない文字は「説明書き」。様々な行為を図解で説明する本、これが何なのかはわかる。

妙な間が発生して、何か気まずさを感じるらしく、ギン千代は大人しくしている。
先ずは俺の沽券に関わるのでギン千代の誤解を解いておく。

「ギン千代、これは俺の本じゃない。細川のだ」

「嘘をつくな!」

「嘘じゃない。大掃除に邪魔だから暫く預かってくれと頼まれたんだ」

これを聞いても尚、訝し気な顔をするギン千代を抱き締めたまま俺は続ける。

「大体俺はこういったものはあまり興味無い。俺にはギン千代がいるからな」

本の中の写真や絵なんかよりずっと綺麗な彼女がいて、欲が湧いた時に好きなだけ触って、抱けるのに必要ないだろう。まあ、これは思っても言わないが。

俺の腕の中で彼女が赤面する。
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