幕末

□蝶と蜂
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「ねぇ、あれって僕達に似ていると思わない?」
「いきなり何の話だ‥」

斎藤と総司は縁側で茶を飲んでいた。
特に会話も無く、静かな時間が流れていたのだが、庭を眺めていた総司が唐突にそう言った。
「あれ見て」と、総司が指を指した方を見る。


そこには、花の蜜を吸う一匹の蝶がいた。
「‥どこが俺達に似ているのだ?」(総司の考えはさっぱり分からん)
斎藤が首を傾げていると、「わかんないの?」と総司が唇を尖らせる。

「一君が花で、僕が蝶。花の甘い蜜に蝶は誘われるんだよ。‥僕も同じ。君に誘われてる」
にっこりと笑う総司に、斎藤は溜め息をつく。

「‥よくそんな恥ずかしい事を言えるな」
「事実だよ」総司は斎藤を抱きしめる。
「ねぇ、一君は蜜をくれないの?」甘えるように言う総司に「あんたは甘やかすと調子に乗るだろ」と斎藤は押しやった。
「つれないなぁ」と離れた総司はあ、と呟く。


「さっきの例えは撤回。‥僕達は蝶と花じゃなくて蝶と蜂だよ」
「どういう事だ?」
益々意味が分からないと溜め息をつく。

「蜂はね、蝶が花に誘われる事に嫉妬するんだよ。甘い花は沢山あるから」
「‥もしかして、俺が蝶で総司が蜂なのか」
「当たり」嬉しそうな総司。「だから蜂は、自分の毒で蝶を飛べなくしちゃうんだ。花の元へ行けないように、ね」
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