幕末

□灯った想いは 上
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「一君って、好きな人いるのか?」
平助の一言が、消そうとしていた俺の気持ちを再認識させられるきっかけだった。


「僕も知りたいなぁ、一君の好きな人」
(‥!?)
急に話に入り込んできた人物に驚く。
「ねぇ、誰?」いつもの飄々とした調子で、沖田総司は聞いてきた。
「‥そのような相手などいない」淡々と答える斎藤。だが、その胸の内は。
(何故あんたがそんな質問を俺にするのだ‥!)


自室に戻った斎藤は、手が震えている事に気付いた。きつく、震えを止めるように握りしめる。
(動揺を、気付かれなかっただろうか‥)
「言える訳が無いだろう‥」総司の事が、好きとなど。

斎藤は、総司の事が好きだった。良くも悪くも、言いたい事を言える正直さ、明るさ。(副長に対する態度は、目に余るが)意地の悪い事も言うが、純粋な一面も知っている。己に無いものを持っている総司に、惹かれていた。
‥その感情が、単に仲間に対する好意の類でない事に気付いたのはいつだったか。
自分でも驚いた。
このような想いを抱くなど‥。
しかも同性に。
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