本編

□兆し
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 時々考える。もし彼がワタシの立場ならば、どうするのかと。

時刻は真夜中、部屋の主は夢の中。
「よく寝てますねぇ」
 小さく呟く。1人の時間は考え事にはうってつけで。暗闇の中にぼんやりと彼の姿が浮かぶ。
 劉黒。今は失われたワタシの対。ギリ、と拳を握りしめる。直結王族の存在は絶対で消えるなど有り得ないと思っていた。でも、彼はワタシの目の前で消滅した。
そして、その因子は昶君に受け継がれた。

 ワタシはずっと彼を探していた、劉黒を復活させる為に。‥そう、目的は劉黒だ。昶君には君じゃないとダメですと言ったけど違う。普段囁く愛の言葉だって嘘。
 昶君がワタシを信用する様に仕向けてる、ただの利用だ。ワタシはいずれ昶君を壊す、だって劉黒の復活に彼は要らないから。

ワタシは最低だろうか? ‥もしもあの時、消えたのがワタシなら劉黒はどうしただろう。
因子を継ぐ者を探し出して、優しい彼の事だから見守るだけに留まるかもしれない。……でも。


ワタシは最初昶君を見つけた時嬉しかった。
だけど失望もしたのだ、劉黒とは別の存在なのだと。
 ワタシは純粋に「劉黒」を取り戻したい、「二海堂昶」の存在を否定してでも。
 穏やかな寝息を立てる昶君を見据える。
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