長編

□それぞれの気持ち
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「ほぉ…あの斉木がなぁ…」

「俺もすげーびびった
だってあの斉木だぜぃ? なずなは知らなかったみてぇだけど」

「新倉らしいな
…時にブンちゃん、やっと自分の気持ち自覚したと?」

「!!」


やべぇ、これ話したら俺がなずなのこと好きだってバレバレじゃん

誰にも知られたくないって気持ちはあったが、仁王はニヤニヤしていて、既に手遅れだと判断する


「………まぁな」

「やけに素直じゃな」

「や、だって今さら違うとか誤魔化しきれねぇし。それに、俺だって結構焦ってんだ」

「珍しいのぅ、ブンちゃんがそこまで消極的とは」

「今まであんな関係だったからな。 これからどう接していいのかよく分かんねぇんだ」


最初はただのうるせーバカ女としか思わなかったし、ただのお隣さんってだけだった

だから何にも考えずに、普通に取っ組み合いしたりだとか、言い合いをしてたけど


「わっかんねぇ…」

「ブンちゃんがそう悩んでる間にも、斉木はどんどん先に行ってしまうぜよ。 あんな風に」


仁王が指差した方に顔を向けると、さっきまで神崎と喋ってたはずのなずなが斉木と話してた

笑顔で話してるなずなを見て、俺の中でなんかモヤモヤしたものが暴れる

気付いた時には


「なずな」


近くまで言って声をかけていた

なずなが振り替える

肩越しに見えた斉木は少し俺を睨んでるように思えた


「あ、ブン太。どうしたの??」

「えっと…あ!今日、オムライスだからおいでって親が…」

「ほんとっ!? 行く行く!
じゃあ私も昨日作ったクッキー持っていくね」


今回も完璧だよ!と、得意げに胸を張るなずな


「まっずいの持ってくんなよ?」

「まずくないわい! いいよ別に!ブン太にはあげないから!」

「冗談だばーか」


むすっとしてるなずなの頭に手を乗せる


「ほんとかなぁ…」

「ほんとほんと」


俺が一番楽しみだって


「なら、別にいいけどっ」

「なぁ新倉」

「あ、斉木君話さえぎっちゃってごめんね。どうしたの?」

「丸井と新倉って家近いの?」

「近いどころかお隣さんなんだー。 私がよく丸井家にお邪魔してるの」

「ふーん…2人ってさ、付き合ってたりするの?」

「お前、何聞いて「付き合ってない!」…なずな」


付き合ってるという言葉に異常反応したように、なずなは声を張り上げた

……そんなにはっきり否定しなくたっていいじゃねぇか。

俺が怪訝そうになずなを見てると、ごめんと視線を下げた


「そ、そういうことじゃなくて…! また変な噂とかたっちゃったら、ブン太に迷惑かけちゃうから…」

「……前に何かあったの?」

「えっ………それは…「はい、この話はここまでな。なずな、幸村君が集合かけてるから行くぜ。 悪いな斉木」

「……あぁ。」


急に黙ってしまったなずなを、人がいない場所まで引っ張ってきた

来る途中に1限目が始まるチャイムが聞こえた気がするけど、そんなのはどうでもいい


「なずな」


立ち止まってからなずなと向き合う

なずなは俯いて黙ったまま

頬を両手で包み、多少強引に顔をこちらに向けさせると案の定、泣きそうな顔をしていた


「…ったく、あれはお前が悪いんじゃねぇって、あんだけ言っただろ?」

「…………」


今にも泣きそうな顔をしているなずなに苦しくなる


「…頼むから、そんな顔すんな。」


なずなと目が合うと、なずなはハッと目を開いて手を伸ばし、俺の頬に触れた


「私もブン太にそんな顔してほしくない、ごめんね」


え、俺今どんな顔してたんだ…?

それより俺の頬に置かれてる手に意識がいきすぎてやばい

つーか、男の頬を簡単に触るな。無防備すぎんだよ


「…あれ、そういえば幸村君の集合って?」


手が離れる


「そんなん嘘に決まってんだろぃ。」


ちょっと寂しいなんてそんなキモいことは言えない


「そっか、気遣ってくれたんだ。 ありがとう、ブン太」

「お、う」


好きって自覚すると、こんなにときめくもんなのか?

あんだけブスブス言ってた奴がすげぇ可愛く見えるって、人ってすごい気がする。全くわかんねぇけど。


「それじゃ、教室戻ろ」

「…おうっ」



教室に戻って散々怒られたのは言うまでもない

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