短歌
□闇の彼方まで
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闇の彼方まで
一人の青年が、辻の中央に歩み寄る。
「おい…なに……やってん、だよ……?」
彼の声が、辺りに響き渡る。
彼の目の前にある少女の遺体は、ピクリとも動かない。
「お、ぃ…死ぬ…なよ……」
青年は、その遺体の体をそっと抱き上げる。
ずっしりと、重みの広がるその体は、少女が死んでいる事を偽り無く青年に伝えている。
現実を突き付けられた青年の声が震える。
「なぁ、目を覚ましてくれよ……名無しさんッ…!!」
『平助……!』
「………!?」
青年の、耳に少女………名無しさんの声が響く。
『もー、平助っ!』
青年は、心の中で叫ぶ。
(「やめてくれよ、名無しさん。オレを置いて逝くことは無かったんじゃなかったのかよ!?オレは…オレは…一人じゃ生きていけないんだ………」)
そんな青年の思いとは裏腹に、彼の脳裏には名無しさんとの記憶が鮮明に蘇る。
名無しさんの怒った顔、泣いた顔、笑った顔………
全てが青年の脳を駆け巡る。
「名無しさん………。」
『平助……えへへ、……あのね?』
「名無しさんっ…!」
『…私…その……平助の事が…』
「名無しさん………名無しさんッ!!」
『大好き!!』
「うわぁぁああああッ!!」
青年の目から溢れた涙が、頬を伝って名無しさんの顔に落ちる。
名無しさんは、涙の雨が降るなか、微笑んだ…
闇の彼方まで
(飛んだ絵空事でも)
(貴方と何処までも生きたい)