短歌
□君の背中
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貴方の背中はいつも頼りなかった。
一人で色んな事を抱え込んで馬鹿みたい。
でも、そんな馬鹿が好きで堪らない私は、大馬鹿者ね。
羅刹になっても、その頼りなさは変わっていなくて私は苦笑いした。
辛いなら辛いって、言わなきゃ分からないのに…
君の背中
「平助…」
私の目の前にいる大好きな彼は目を閉じたまま動かない。
神様ってイジワルね…
彼を灰にしてしまうならば、顔からにして欲しかったわ…
だって、そうでしょう?
そうしたら、彼の死に顔を知らずに今もこの先ずっと、あの眩しい位の笑顔の彼を覚えてられるじゃない…
私の大好きな彼と同じ服を着た別人と思えるじゃない…
私はそんなに強い人間じゃ無いのよ……?
私の思いとは裏腹に彼の手足はどんどん灰になっていく。
「名無しさん」
平助が私の名前を呼んでくれていたあの日々を思い出す。
「名無しさん……」
「平助…ッ!!」
嗚呼、涙が零れて彼の頬を濡らす。
「名無しさん!」
「あ、ぅ…平助…好きだよっ!!大好きだよ!!ねぇ!!……お願いだよッ……目を…目を…覚ましてよ!!私を…一人にしないで…」
全く反応をしめしてくれない彼に、私の声はどんどん大きくなる。
その瞬間、彼はいつものように笑った…。
死んでしまった筈の彼が………
「へい…すけ……?」
私の声が木霊した。彼は笑った後、一瞬だけ呟いて灰になった。
君の背中
(好き)
(ほんの一瞬の思い)