短歌

□君の背中
1ページ/1ページ






貴方の背中はいつも頼りなかった。


一人で色んな事を抱え込んで馬鹿みたい。


でも、そんな馬鹿が好きで堪らない私は、大馬鹿者ね。


羅刹になっても、その頼りなさは変わっていなくて私は苦笑いした。









辛いなら辛いって、言わなきゃ分からないのに…






君の背中











「平助…」





私の目の前にいる大好きな彼は目を閉じたまま動かない。





神様ってイジワルね…




彼を灰にしてしまうならば、顔からにして欲しかったわ…




だって、そうでしょう?




そうしたら、彼の死に顔を知らずに今もこの先ずっと、あの眩しい位の笑顔の彼を覚えてられるじゃない…




私の大好きな彼と同じ服を着た別人と思えるじゃない…




私はそんなに強い人間じゃ無いのよ……?




私の思いとは裏腹に彼の手足はどんどん灰になっていく。





「名無しさん」





平助が私の名前を呼んでくれていたあの日々を思い出す。





「名無しさん……」





「平助…ッ!!」





嗚呼、涙が零れて彼の頬を濡らす。





「名無しさん!」





「あ、ぅ…平助…好きだよっ!!大好きだよ!!ねぇ!!……お願いだよッ……目を…目を…覚ましてよ!!私を…一人にしないで…」





全く反応をしめしてくれない彼に、私の声はどんどん大きくなる。





その瞬間、彼はいつものように笑った…。





死んでしまった筈の彼が………





「へい…すけ……?」





私の声が木霊した。彼は笑った後、一瞬だけ呟いて灰になった。









君の背中
(好き)
(ほんの一瞬の思い)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ