短歌

□居残り
1ページ/2ページ




「あーあ、居残りって本当に暇だなぁ…」




私の吐いた溜め息は、誰も居ない教室に響いた。










居残り










少し暗くなった空を窓から見ると、私はまた一つため息を吐く。
目の前に広がる字が一杯のプリントの山。




「こんなことなら土方先生の授業、真面目に受けておけばよかった…」




「そうだな。」




「うひゃあッ!?」




私の後ろから話し掛けてきたのは、クラスメイトの原田左之助。
私が驚いたことをスルーして普通に私の目の前の椅子に座る。




「で?何が駄目なんだ?」




「は?」




「『は?』じゃねぇよ…プリントの問題、何ができねぇんだ?」




「あぁ、えっと、漢字と文法は出来るんだけど、古文の句読点とレ点の配置替えが…」




「あー……。土方先生が授業ですっげぇ説明してたからな…」




「嘘…」




「ま、まぁ、今からやりゃ出来るさ。で、ここは…」




私の話をスルーして、古典の説明をしてくれる。




………左之助の指って長いんだなぁ…。綺麗………って、私ッ!?何考えてんのよ!!




「いっ…おいっ!!」




「は、はい!?」




「お前な…ちゃんと聞いてたか?」




「うえっ…とおー……。」




「じゃあ、問四自力で解いてみろよ?」




「…………ッ!?」




「俺が言ったことを聞いてれば、出来るけどな……?」




左之助に言われてプリントを見ると、明らかに印刷の文字とは違うボールペンで書かれた文字。
あれ…この字って…左之助の…
私は不思議に思って左之助の顔を見ると、含み笑いをしている。




「早く解いてみろよ。」




「う、うん…」




…………古典の問題じゃない……じゃん




「さ、左之助!?」




「さー帰るぞ?名無しさん。送ってってやる。あ、問四は明日までの宿題な?」



嗚呼…私はこの人に一生敵わないと思う。







居残り
(お前の好きな奴を答えなさい)
(私は今答えられます)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ