短歌
□さよなら
1ページ/1ページ
私の目の前からどんどん遠ざかっていく原田さんの背中。
隣には永倉さんと千鶴ちゃんの背。
私の隣には、誰もいない。
さよなら
「居………ない…誰…も。」
目の前の景色がぼやける。
目頭が熱くなり、鼻がツンと痛くなる。
私の頬に伝う暖かい涙。
いつもなら拭ってくれる彼はもう、居ない。
嗚呼、今でも覚えているあの人の声、温もり…
「どうしたんだよ?元気ねぇな…何かあったか?」
優しく頭を撫でてくれた大きくて、無骨な手。
「名無しさん!!!大丈夫かッ!?」
何かしらあると、直ぐに心配してくれる貴方…
私は本気で思ったんだ…
「名無しさん。いいか?誰にも言うなよ?俺の夢はな…」
叶えたいと…貴方の夢を。
でも、貴方は私以外の人と歩むと決めていた…
私を残して…
「俺の夢はな…」
涙は行く宛も無く、唯地面に落ちていく。
好きだった…大好きでした…
思えば思うほど涙が溢れていく…
でも、でもね…叶えるのが私じゃないのなら、せめて願わせて…?
少しくらいなら、いいよね。罪じゃないよね。
さよなら
(来世では叶えていいですか…)
(貴方の夢を)