短編-T-

□夕立のりぼん
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突然の夕立だった。
先に帰った彼女は傘を持ってるかしら?
下駄箱に行き彼女がいつも利用している傘立てを見ると彼女が使っている薄いピンクの傘があった。
今頃濡れて帰ってるかな?それとも雨宿りしてるかな?
とりあえず持っていってあげよう。
そして、彼女に今日のことを話そう。彼と話せたよ、と。
きっと彼女も笑って「良かったね」と言ってくれる。
嗚呼、本当に楽しみだ!


夕立だけれど酷い雨だった。
少し歩いただけで靴は濡れて靴下が気持ち悪い。
まだ学校内に居ることを信じて歩いて10分ほど。
校舎裏の影に彼女を見つけた。
声を掛けようと口を開くが、


「え…?」


なんで、どうしてアンタが彼と居るの?
なんでそんなに仲良さそうなの?
雨音が強くなった気がする。
徐々に二人の距離は近付いていく。
嫌だ、見たくない。見たくないのに目が逸らせない。止めてお願いヤメテ。
そして二人の唇が重なった。
どうして拒否しないの?私の気持ちを知って、その行為をしたの?
雨に紛れて聞こえる"内緒だよ?"。
私は手に持っていた彼女の為の傘を落としてしまう。

――永遠の閃光

目の前がフラッシュして意識が遠く、遠くになる。
強くなった雨が地面を叩く音。それに掻き消される本当に微かな"愛してる"。


――どうして?


涙は流れなかった。
あるのは胸にやどる微かな絶望と疑問。そして裏切られた事に対する怒りだった。
二人はプラトニックな掟を破っていく。
"傘はささずに一緒に帰ろ"
言うと彼は彼女にかけていた自分のブレザーを取り二人で被ってこの大雨の中を帰っていく。
私は制服のポケットに入れていた携帯を取り出し帰っていく二人の姿を写真に撮る。


許さない。
私を裏切って、タダで済むと思わないでね。




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