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□あじさい寺
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「仙蔵っ!後ろ…っ!」

仙蔵の背後で刀を振り上げた敵の喉元を、文次郎が横から槍で突いた。
「ぐァ…っ」
敵は血しぶきをあげて崩れ落ちる。
仙蔵も素早く刀を振り抜いて目の前の敵を切り捨てた。


賊に奪取された密書を取り返すことが今回の任務。 
任務は六年い組とろ組で行う。
い組が陽動、ろ組が隙をついて賊のアジトから密書を奪取する作戦だ。

(……合図はまだか?)
仙蔵はチラリと空を見た。
もう随分と敵を倒したし、陽動は上手くいっているはずだが…、長次と小平太は大丈夫だろうか。

「ぐあああ…っ!」
ドサリ。 また一人 文次郎の槍に倒れた。
絶命している。

(余裕がない…)
仙蔵はそう感じていた。
文次郎は必要以上に人を殺めるようなことはしない。
賊と聞いていたが随分な手練で、確実に仕留めなければこちらがやられる。
今はそういう状況だ。

「多勢に無勢とは……!久しぶりに血が騒ぐぜ…っ!」
文次郎は顔についた返り血を手で拭ってそう言った。

(ひい、ふう、み……)
残る敵は十ばかり、しかし、まだ他にも気配を感じていた。

「無理するなよ、文次郎!」
仙蔵と文次郎は背中合わせに武器を構え、自分たちを取り囲んだ敵を睨んだ。
「いくぞ…」
「ああ!」
二人は再び敵に切りかかった。





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