ブック

□Happy Birthday
2ページ/8ページ


がらり、と静寂を破るように襖を開ける音がした。

そして、豊かな髪を揺らして入ってきたのは綾部喜八郎だった。
綾部は座禅を組んだ仙蔵の後ろ姿に
「センパイお疲れ様です。」と声をかけた。
仙蔵は何も返さなかったが、これがいつものやり取りだった。
普段なら、綾部が湯を沸かして茶を淹れたりするのだが、今日の綾部は仙蔵の顔を覗きこむと、
「おや…?」と言って首を傾げた。

「立花センパイ、何かありましたか?」
綾部は怪訝そうに聞いた。

綾部は、人に対して無関心を装っているが、実は顔色を読むのが得意で、時々妙に鋭い。
「先輩、何か気にかかる事でもあるんでしょう?」と勘ぐってきた。

綾部は、優秀でクールビューティな立花仙蔵に密かに憧れていた。
二つ上の憧れの先輩…。
同じ委員で活動できることも嬉しかったが、綾部は仙蔵との距離をもっと縮めたかった。



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ