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□イン&ヤン
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小平太は朝食を手早く済ませると、医務室に向かった。
ガラリと扉を勢いよく開けると奥から
「小平太だろう?」と、この春から保健委員長になった善法寺伊作の声がした。

「よく私だってわかったな!」
ついたての奥まで進んで言うと、
「足音でわかるよ。」とさらりと返された。
伊作とは長屋で隣部屋なのだ。

「そんなことより、長次はどう?」
「ああ、そのことで来たんだけど。まだ熱が下がらないんだ。私はどうしたらいい?」

うん…と伊作は少し考えてから、
「熱が高いなら絞った手拭いを額に当てると少しはいいかもしれないね。
後で新野先生と行くよ。」
と言った。

小平太が部屋に戻ると長次はまだ寝ていた。
外はまだ寒いというのに、長次の顔は火照っているように見える。


小平太が絞った布で長次の額を拭いていると、コンコンと小さく扉を叩く音がした。
「小平太、入っていいか?」
伊作の声だった。
扉を開けると、新野先生も一緒だった。
小平太は、「寝てるから静かにな」と注意して二人を部屋に入れた。







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