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□悪戯
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任務を終えた帰り道。
わたしは小平太に変なことを言ってみた。

「小平太。来週、京の都まで一泊で行く予定なんだが。長次を借りてもいいか?」

「なんで?京の都と長次と何か関係あるか?」
前を歩いていた小平太が歩みを止めた。

「途中で立ち寄る予定の寺院に飛鳥時代の貴重な書物があるんだ」
「書物が目当て?場所だけ教えてくれれば、わたしが長次と一緒に行くんだけど」
小平太が口を尖らせる。

「いや、長次がわたしと行きたいと、前に言っていたのを思い出してな」

「長次が?」
小平太の髪の毛が一瞬逆立つ。

「ああ。書物について一緒に講評しようと思うのだ。だから長次と一緒に……」
「それは嫌だなー……、ん?」

小平太が首を傾げて立ち止まる。

「なんだ?」
わたしが振り返ると、小平太と視線が合った。

「……仙ちゃん。それ。嘘だろ」
「何故?」
「仙蔵が嘘つく時の癖が出てる! 冷やかしただろっ」

小平太が、がおー、と両手を上げて構えて見せた。

「ち。バレたか。妬かせてみたかったのだが」

バレたらしょうがない。
わたしは、小走りに逃げ出した。









おわり(笑)
14.7.5







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