ブック

□悪戯
1ページ/2ページ



くじ引きで決めた二人組で任務に向かう道すがら、小平太が変なことを言い出した。

「仙蔵ってさ、文次郎のこと好きなの?」

そう言って振り返った小平太はにやりと笑った。

「何、馬鹿なことを!好きなわけあるか!気持ちの悪い!」

咄嗟にそんな言葉が口をついた。

「へ〜え。仙蔵は文次郎のこと好きじゃないんだな。じゃあさ。わたしが狙ってもいいのか?」
「え……っ」

驚いて聞き返す。

「文次郎ってすごいと思わねぇ?この前なんて、米俵を山盛り積んだ荷車に私と長次を乗せて峠越えをしたんだ。
途中で出てきた山賊だって、一人で全部倒しちゃうしさ。だから、惚れた!強さに惚れた。だから狙ってもいい?」

「そ!それは駄目だ!」

「なんで?だって好きじゃないんだろ?」
小平太がじっと見つめてくる。

「好きじゃないけど、駄目だ!」

「好きじゃないけど駄目なんだ?」

「……そうだ。」

「ふーん。やっぱり仙蔵は文次郎のこと好きなんじゃないか」

「別に好きなんかじゃ!」

わたしはそう言って、下を向いた。
紅潮しているだろう顔を小平太に見られたくない一心だった。

「くくくっ。あっはっはっは!やっぱり仙ちゃん可愛いや!文次郎が羨ましいぜ!」

「どういう了見だ」
「ちょっとからかってみたかっただけ!」

そう言って小平太は足早に逃げた。
なんという悪戯小僧だ。

「待て小平太!許さん!!」







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ