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□六年は組の終末
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任務を終えた留三郎と伊作は戦で廃虚と化した村のはずれを歩いていた。

「見て、これ。……どう思う?」
伊作が立て看板の前でふと足を止めた。

伊作が指差した先には、紙が貼り付けてあり、
『終末近し。当塾に入門すれば救いの道が開ける』
などと記されていた。

破れかけたその紙は風に煽られて、バタバタと異様な音をたてている。


「他の町でも似たようなビラを見たぜ。どこもかしこも戦乱だからな。
町民や百姓の不安を煽って、金を集めたり、一揆に加勢させたりする輩がいるんだろ?」

留三郎はそう言って訝しんだ。

「うん、それは知ってる。 そうじゃなくてね、この世の終わりが近いってはなし。」

伊作は、留三郎の方に振り向いて言った。

「……出鱈目だろ。 伊作はこの世の終末なんて、まに受けてんのか?」

留三郎はそう言うと伊作を置いて先を歩き出した。

「始まりがあれば、いつか終わりが来るはずなんだ。単にそれが、明日なのか、千年後なのか、わからないだけでさ」

伊作は、そう言うと慌てて留三郎を追いかけた。

「始まりがあれば終わりがある、か。 うん、まあ、確かにな。」
留三郎は小さく言うと頷いた。

「じゃあさ、もし明日この世が終わるとしたら……? 留三郎はやり残したことはない?」

「うーん、死ぬのはそんなに怖くねぇけど。……あぁ、でも、そう言えば死ぬ前に一度行ってみたい場所ならある」

「どこ?」
伊作が尋ねた。

「それが、どこかわからないんだ。 前に絵巻物で見た風景なんだけど」
そう言った留三郎は眉を寄せた。

「どこだろうね。 ねぇ、その巻物って忍術学園の図書室にあるの?」

「あぁ」

「なら、今度僕にも見せてよ」

伊作はそう言うと、留三郎の手をそっと握った。



二人の後ろで起こった小さなつむじ風が枯れ葉を灰色の空に運んだ。









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