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□その想いは時を超えて
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仙蔵は先に店を出た青年の側に駆け寄ると小声で言った。


「まだブツは確認してないな。綾部。」

綾部と呼ばれた青年は、パブから出た客を建物の陰から監視しながら、ハイ、と返した。


綾部の現職は、麻薬取締官である。
店から出た客のうちの一人は麻薬密売人で、今晩取引がありそうだという情報が入り尾行していたところだ。

一方の仙蔵は警視庁捜査課に務める刑事である。


麻薬取締官と刑事が組んで仕事をすることはあまりないが、仙蔵が追っている事件と、麻薬捜査が切っても切れないことから、仙蔵の権限で麻薬取締官を一人招聘した。
それで来たのが綾部だった。


「さっきの人。センパイの知り合いですか?」

綾部が聞いた。
綾部は、仙蔵のことを「センパイ」と呼ぶ。
二人が大学時代の部活動で先輩後輩関係にあったから許される無礼だ。


「違うか。センパイの好きな人ですか?」

綾部は密売人から視線を離さず、淡々と続けた。


「…。妙なプロファイリングだな。気になるか。」

仙蔵が言うと、綾部はちらりと仙蔵の方を見て頷いた。


「ハイ。とっても」

仙蔵は綾部の裏表のない返答に思わず苦笑する。

「それより見ろ、出るものが出るぞ!」
「ああ!向こうから来るの、バイヤーか。」
綾部がこく、と頷く。
「そうだろうな。」
仙蔵が小声で返すと、二人は獲物を狙う豹のように息を殺して飛び出す瞬間をはかった。
「…。」

綾部のふわりとしたアッシュグレイの髪が夜のビル風に靡いた。


二人の視線の先では、密売人がビニールの袋をバイヤーに手渡し、それとは引き換えに何やら封筒を受け取っていた。

「間違いない、行くぞ!」

二人は真夜中の路地に飛び出した。



「そこの二人っ! 動くなっ!!」



* * *









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