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□その想いは時を超えて
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朝の光が差し込むベッドの上で二人は裸になった。



そして抱き合った。
離れていた時間を、距離を埋めるように。




身体を合わせてしまえば、
離れていた期間が、長かったような、短かったような、もうそんなことはどうでもいいような気さえしてくる。

文次郎の心臓の音も、興奮でじっとりと汗ばんだ肌も、どうしてこうも愛おしく感じるのだろう。

不思議なものだ…。






「仙蔵、ここ、どうした…?」

文次郎は仙蔵の左肩にキスを落として、唇で丁寧になぞると静かに言った。
そこには手術痕が残されている。

「腕利きの医者に治して貰ったから、痕は消えているはずだが。…わかるんだな。」

「そりゃあ…」

「捜査中に撃たれたんだ」

「何…、仙蔵の身体に傷をつけるとは、なんて輩だ」

「ほら、こっちも」

仙蔵が指差した足にも傷痕が残っていた。

「痛くないのか…?」

文次郎は心配そうな表情を浮かべた。

「もう、何年も前の傷だ。何ともない」



「それより文次郎、珈琲は?」

「あぁ!…淹れ直す」

「注いであるのを戴くよ」
仙蔵は、Tシャツを着ると言った。

「冷めた珈琲なんか不味くて飲ませられねぇ」

「暑いから丁度いいけどな」

「そう言う問題じゃない、すっかり酸化しちまって駄目だ。 一番美味い珈琲を飲ます約束だからな」

「いちいち律儀な奴だな…」

「美点だと思わないか?」

「勝手に言っていろ…」



シャツに袖を通して部屋を後にした文次郎を後目に、仙蔵は枕を抱きしめると顔をうずめた。








***








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