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□恋と憧れ
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「…。」
突然目の前に現れたこの後輩は、どう考えても自分に喧嘩を売っているとしか思えなかった。
しかし、俺だって、安い挑発に乗って年下の奴をぶん殴るほどガキじゃあない。
「…中間成績見ました。」
喜八郎は、唐突に言った。
「僕は四年の中で一番でした」
「…。 ああ。 俺も見たぜ?。」
「六年生は、あなたが一番で、立花センパイが二番です。」
「…?」
「だからね、もし、僕が六年だったら、僕が立花センパイのパートナーだったかもしれないんだ!」
「…。」
忍術学園では、成績順に組み分けが行われ、さらに、組みの中の成績順で、長屋の部屋割りが決まる。
喜八郎は、どうも、そのことを言っているようだ。
「ふん。なんだ、おまえは、仙蔵と組みたいのか?」
文次郎は、ニヤリと笑う。
「…それは少し違います。
貴方が立花センパイの同室にふさわしいのかと…!!」
喜八郎は、そう言うと、踏鋤を構え、文次郎を上目遣いに睨みつけた。
「何だと…?」
―――仙蔵の同室に相応しいか…
そんなこと、これまで考えたこともなかった。
気づけばいつも隣にいたのだ。
しかし、そのポジションを狙ってくる輩がいたとは。
(それにしても…、綾部喜八郎。 こいつは、仙蔵のことを…?)
文次郎も喜八郎を見据え、視線で威嚇すると、懐からクナイを取り出して身構えた。