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□恋と憧れ
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「!」
「うおっ…!危ねっ!」
文次郎が校庭を歩いていると、突然何かに足を取られた。
一瞬よろめいたが、すぐに一歩引いて体勢を整える。
足元を見ると、好運にも踏み抜ぬかずに済んだ、トラップの敷板があることに気づく。
これは、落とし穴だ…。
校内に落とし穴を掘る輩なんて、一人くらいしかいない…。
文次郎がすぐ脇の茂みを睨むと、ガサガサと葉が揺れた。
「あーあ、大失敗!」
喜八郎が茂みの中から、にょきりと顔を出す。
「俺が落ちなくて、残念か!?喜八郎っ!」
何が大失敗だ!
文次郎は思わず語気を強める。
「僕のトラップを避けるとは、さーすが、忍術学園一忍者してる、と豪語するだけのことはありますね、潮江センパイ!」
「…? 何が言いたい?」
喜八郎のもの言いには、敵意…と言うか、何か棘のようなものを感じる。
「やだなあ、そんな恐い顔しないでくださいよ。
ただね、僕があと二歳くらいフケていたらな〜…、って思って。」
「喜八郎! おまえなぁ、俺を怒らせたいのか?」
「違いますよ。それはきっと被害妄想です。」
喜八郎はとんでもない、という表情で、慌てて手をふる。