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□Happy Birthday
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綾部は、目を瞑って沈黙を続ける仙蔵の整った横顔を暫く鑑賞していたが、
人差し指を口元に当て、うーん…と少し考えると、「わかった!」と明るく言った。
「立花センパイって、今日誕生日ですよね。私たちが祝ってくれないから怒ってるんでしょう!」
仙蔵は返答しなかったが、「ハズレ…」と、心の中で呟いた。
今日が仙蔵の誕生日であることは違いなかった。
しかし、仙蔵は他の忍たま同様、子供っぽく誕生日を祝って欲しいなどとは思っていなかった。
祝ってくれるなら、一人で充分だ…。
仙蔵は、パチリと目を開いて、
「今日が私の誕生日であること…よく知っているな」
と綾部を見て言った。
「そりゃあ、センパイの事ならなーんでも知ってますから」
綾部は自慢げに返す。
「なんなら、作法委員総出でお祝いしましょうか?」と付け加えた。
「気を遣うな、今夜は予定があって忙しいのだ」
仙蔵は綾部の申し出をやんわりと断った。
「すまないが、私はそろそろ行く。」
そう告げると、仙蔵はすくっと立ち上がり庵を後にした。