□それはまるで、 第三部
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アラジンとアリババ








涙と、二人
















辛く、悲しく、そして誰も彼もが大切なひと、大切な何かを失った。

けれど、それを取り戻すのではなく。やり直そうと決めた。

自分たちの足で、力で歩んでいくために。それを成し遂げるための戦いだった。










_ _ _ _ _ _ _ _ _・・・




あの後。アラジン達一行は、バルバッドを離れ、南海の島国シンドリア王国、かのシンドバッド王が納める国にやってきていた。

その国土は「未開」と呼ばれる極南地帯に位置し、かつては人を寄せ付けぬ絶海の孤島であったのを、シンドバッド王が開拓した。

「迷宮攻略伝説」の末に作り上げられた「夢の都」として広く知れ渡り、訪れる人は多い。

北大陸では見られない珍しい地形、気候、動植物と共に人々は生き・・・

国は貿易と観光によって栄え、国民達が益々それを盛り立てようとしている。

そんな柔軟さと逞しさを持つ素晴らしい国であった。




シンドリアに戻ってすぐに、シンドバッド王は国を離れ、煌の皇帝に会談を持ちかけるため、煌帝国帝都へ出向いていた。


シンドバッド王と、その護衛であるシャルルカンとスパルトスを見送った後。

レイラは、大切な友人を無くしてふさぎ込んでいる二人の少年の所へ向かった。

双方の大切な友人、カシムとウーゴくんをなくたことが二人の心に深く深く寂寥と喪失の感を残していた。

侍女達が戸惑うようにおろおろと机に伏す彼らに料理を勧めていた。

酷く痛々しいその姿に目を細め、侍女達を下がらせる。


「・・・アリババ君、アラジン君。」


レイラの声に気付いた二人が、呆然としたような表情で振り向いた。


「レイラさん・・・」


アリババが驚いたように彼女の名前を呟く。「どうかしたのかい?」と声を掛けてきてくれるけれど、いつもの元気がないアラジン。


すっとそんな彼らに近付くと、微かに窶れ、心配をかけたくなかったのか、涙の跡が残りうっすら赤くなった目元を撫ぜた。


静かに二人は目を見開いた。頬を撫でてくれる彼女の表情が、見たことのない物だったから。


彼女は気付いていなかった。自分の表情が、酷く苦しげで、まるで泣き出すのを我慢しているような物であったことに。


「・・・・・頼っても、いいんですよ?」

レイラは表情をそのままに唐突に切り出す。


「泣くことは、悪いことでも弱い人がすることでも無いです。」


「確かにいまは辛くても、どんなに痛くても、時によっていつかは癒える。・・・傷は残るけれど、それでもその傷は自分の為の物。他者にはない、自分だけの宝物になります。」


「これからもっと辛いことがあっても、君たちには泣く事さえ出来ない時が来るかも知れません。」

レイラは、伝えたかった。まだまだ子供なのに、ずっと遠くを見ている彼らに。だから、


「だから、今は泣いても良いんですよ。」


撫でていた手に、ぽたりと水滴が触れた。

それはずっとレイラの手を濡らし、抱きしめた後には、彼女の肩にこぼれ続けた。




泣くことは、素晴らしいこと。

たくさん泣いて、辛かったことや悲しかったことを忘れずに、優しく心の引き出しにしまっておけるように。

そうすれば、見えていた物が、世界が。もっと綺麗に、美しく見えるようになるかもしれないから。





傷は、いつかは癒える。けれど、その傷跡をどう思うかは本人が決めること。

無くなった物を求めるか、もう一度、少しの勇気を出して前に進むか。

・・・ただ、それだけの違いなのだ。









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