長編小説

□機動戦士ガンダムS、D after war
1ページ/8ページ



Phase 00 新たなる世界

●プロローグ●
 
C.E 73 メサイア攻防戦の後、各国は新たな体制の下、大戦の混乱からの復興に励んだ。それは、大国であろうが、小国であろうが、例外はない。各国にはそれぞれが抱える問題をこの機に解決しようという風潮があった。しかし、それに反発するものもいて、各国議会での反発や、著作物による批判、最悪テロ行為などの武力行使ということもあった。
しかし、各国はそれらに対応しながら着々と、復興の道を歩んだ。そして、終戦の四ヶ月後、ユーラシア連邦 パリにおいて、プラント、オーブ、大西洋連合やユーラシア連邦などの地球連合構成国との首脳会談がて行われる事となった。




とあるパリ市内の高級ホテルの一室で、桃色の長い髪を白いリボンでポニーテールに結い上げ、黒いロングドレスを身にまとい、手渡された協議の資料を椅子に座って読んでいる若い女性がいた。彼女の名は、ラクス・クライン。その名はかつて歌姫として世界中に知れわたっていたが、今はプラント最高評議会議長という政治家として知れわたっている。彼女が補佐官達と話をしていると、部屋のドアが開く。 「議長、お時間です。」と、告げたのは、整った顔立ちのラクスと同じくらいの年齢の男性であった。 その人は、ラクスの最愛の人、キラ・ヤマトであった。彼は終戦後、ラクスの計らいによってザフトに軍籍を置き、議長直属のMS部隊の指揮を任せられ、白服を身に付けている。それに加え、彼女の推薦によって、議長専属の護衛を務める事にもなった。(これは、彼らが、恋人同士である事が大きいが)
『はい、わかりました。』と、恋人の姿を認めると、晴れやかな声で答え、補佐官達を連れて、部屋を後にした。
一行が廊下を歩いていると、向こうから鮮やかな金髪のラクスと同年代の女性が補佐官と話をしながらやって来た。彼女こそ、オーブの獅子 ウズミ・ナラ・アスハの娘 カガリ・ユラ・アスハであった。オーブの一行のなかには、キラの無二の親友のアスラン・ザラの姿もあった。
『まあ、カガリさん。』
『やあ、ラクス。』
お互いの姿を認めると、カガリとラクスは、どちらからとなくお互いに歩み寄り、久々の再開を喜びあった。
戦後のオーブとプラントの関係は、国のトップ同士である、ラクスとカガリがお互いに親友であるのが功を奏し、今まで以上に良くなった。ラクスとカガリが話をしている合間、キラが、アスランに声をかける。
『ねぇ、カガリとはどう?うまくいってる?』
キラは双子の片割れであるカガリと親友の関係が気になるようだ。
『今はこんな状況だから、そういう話が彼女とできる訳ないだろう。』と、ぶっきらぼうに話す。
『ふ~ん。恥ずかしくて話せないんだ。』と、冷やかし気味にキラは言った。
『なっ、そんなんじゃない‼』と、アスランは反駁する。
『やっぱり図星なんだ。顔が赤いよ。』と、赤くなったアスランを見て更にからかう。
それを言われて、何も言えなくなったアスランだが、思い出したように、キラの事に話題を移す。
『そういうお前はどうなんだ?』
『まあね。ラクスとはうまくいってるよ。』と自慢気にキラは話す。
『まさか、仕事の途中に抱き合ってるんじゃないか?』
『失礼しちゃうな。僕が分別のつかない人間だと思う?』
『お前の事だからな。あの時、俺やシン達の前で堂々と抱き合ってたからな。』とキラがプラントに来た時の事を引き合いに出す。
『後で覚えときなよ。』
『あぁ、そうしておくよ。』
キラとアスランの光景はその年頃の青年の会話だった。

そして、オーブとプラントの一団が廊下を歩いていると、カガリがラクスに小声で話しかけた。
『ラクス、連合内で良くない状況が起きているのを知ってるか。』
『どういった事です?』
『連合軍部の戦争継続派がクーデターを画策してるという話だ。諜報部から入った情報だ。』
『そんなお話を私にしても大丈夫なのですか?。』
『大丈夫だ。話は付けてある。』
『私の方も存じ上げておりますわ。』
『なんだ、知ってたのか。』
『えぇ。』と笑顔で答えるラクスを見て、彼女の国家元首としての手腕の高さを心の内で評価すると共に、同時に脅威も感じた。
『それにしても…』 ラクスが、窓から不思議なくらい晴れ上がった空を見上げながら言う。
『もう、戦争は沢山ですわ。』
『あぁ、全くだ。』とうんざりしたようにカガリは答えた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ