よみもの
□蛇と知恵の果実
1ページ/1ページ
蛇はとても狡く、卑怯であった。
小さな手足を使い、木をよじ登ることも出来た。
餌は自身で取りに行くことができた。
ただ、彼にツガイはいなかった。
側にいるのは笑ってくれる友であったが、決して芯から信用をするほどでもなかった。
彼の心は狭く、また世界はとても低い所に作られていたからだ。
蛇はある日、二人の男と女を見た。
仲睦まじく手を取り合う二人を、蛇は決して優しくはない瞳で見つめていた。
その時は声を掛けはしなかった。
何故ならば、二人は神に祝福されていたからだ。
それから暫くして、蛇は女にもう一度出会った。
彼女は赤い知恵の側に居たので、それを食べるように勧めた。
戸惑った彼女は欲に負けて、知恵の果実を食べた。
所詮、コンナモノダと蛇は笑った。
次に、女は男にその赤い果実を勧めた。男は女が食べたのを見て、自分もそれを食べた。
神は彼らが果実を食べたことを知り、二人を追放した。
蛇は手足を失い、土を這って生きている。
それでも、蛇は幸せだった。