よみもの

□ハンモック
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ハンモックは、ゆらゆらと揺れていた。
私ひとり分の重さをネットにのせて、ゆらゆらと。
ネットの幅は狭くて、私の身体だけで埋まっていた。頭と足の爪先だけが余っていて、そこにはまあるい鉄球が乗せられた。
それは、私の思いを具現化させたものなのだという。
私の思いは、日ごとに増えていく。
時間ごとに重さを変え、ネットは左右だけでなく、上下にも揺れた。

その衝動で転げ落ちた鉄球に、私は安堵の溜め息を吐く。
たまに、ぬいぐるみが私の隣に眠る。
大好きで、愛おしくて、私を守ってくれるものだった。

上下左右、揺れるハンモック。
バランスを上手く保てなければ、私も一緒に転げ落ちてしまう。

いつの間にか恐怖感が私を襲い、支配するようになった。

私は鉄球ごとネットにしがみつき、鉄球はハンモックが揺れても落ちることはなくなった。

ゆっくり、じりじりと重さを重ねるハンモック。

ネットはついに、上下に揺れなくなり、下へと落ちるばかりになった。
左右へ大きく動いていた揺れは小さなものへと変わり、私はついに恐ろしくなる。

しがみついた手を離せなくなり、やがて乗せきれなくなった鉄球は私の上にも転がり落ちてくる。

ネットがギリギリと音を立てる。
私の背骨もミシミシと音を立てる。

骨が泣いているようだった。

鉄球は、溢れんばかりにハンモックへ積み重なる。

身動きが取れなくなり、私の視界には黒く色づいた鉄球しか見えなくなった。

人工的な闇が作られ、私の心までも闇がくつろぎ始めた。

うつらうつらとうたた寝をうつ闇が、私の心に黒いハンモックを作った。

そして、私の中にも鉄球が落ちていく。

ハンモックは限界を訴えた。

私の心に落とされた鉄球の重みが、そのままハンモックへとのし掛かる。


止めて、ちぎれる。
落ちる、落ちる、こわい、こわい!

心の闇はハンモックに揺られ、心地好さそうに足を組んでいる。

ふと目があって、私は瞬きをした。


ニッコリと、闇は屈託のない笑みを見せた。

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