恋愛狂騒

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執念とも呼べるかも知れない。

調べたんです、僕。

僕の愛しい太子をいじめるのは何処の屑ですか?

僕に絞め殺されたくてたまらない馬鹿は何処の、どいつですか――?




20・報復




太子は見合いなんてしたくなかったんだ。

僕というものがありながら他の女と結婚するなんておかしい。

僕は寝台で、眠る太子を抱くように、そして抱かれるようにしながら考えた。

心の中にこんなに怒りが渦巻いているのに、太子の寝顔を見るとそれを削がれてしまう。

静かに寝息を立てて僕を抱きしめてくれている太子の寝顔に、つい破顔してしまう。


――嗚呼、愛しいです、僕の太子…。


けれど、太子が愛しければ愛しいほど、やっぱり怒りは湧き上がる。

太子に近付くものの全てが許せない。


「…ねえ、太子」


僕は太子の唇にそっと口付けると、耳元で甘えるように囁いた。


「太子は僕が護って見せます。何があっても絶対に、護り抜きます…。僕のことを護って愛してくれる大好きな貴方だから、僕は命に代えても…」


彼のために死ねたらなんて幸せだろう。

一大決心。

僕は戦う。

太子のために、僕は何だってする。



脱ぎ捨てられた朝服に袖を通して寝所を抜ける。

早朝の朝廷をトントンと歩く僕の目に映るのは、わりと見慣れない上官達の領域。

そのとある一室に忍び込むと、誰もいないのを確認して書類が片付けられている棚に手を伸ばした。

沢山の書簡に気が遠くなり、フッと軽い目眩すら覚える。

…けれど。


(太子…貴方は絶対に僕が……)


「っふふ……」


この行動が彼を救うことに繋がっているのだと考えた途端に心が躍るこの不思議。

書簡の紐を解いてシュルシュルと開いていく。

年貢?畑?外交?

違う、違います、僕が探しているものはこんなものじゃなくて…!!


もうどれほどの時間が経っているのか、そんなことは僕には分からなかった。

ただ無我夢中で書簡を開いては閉じ、とある書簡だけを探し続けていたのだから……。


カーーン…




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