恋愛狂騒

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「…ごめんなさい。朝廷で死人なんか出たら、聖徳太子はお嫌でしょうね…」

「何言ってんだ、私が言いたいのはそんなことじゃなくて…」

「だって そうでしょう?そうでもないと、だって…っ」


太子の真っ直ぐな視線に言葉の続きを言うことが出来なくなった。

言ったとしても、こんなに混乱している今の自分が まともなことを言えるはずがなかったけれど。

目は口ほどにものを言う。

いつもは何を考えているのか分からないようなお調子者のくせに、今の太子を見ていると、なんだかこの男がその気になれば、視線で人を殺すことも出来るのではないかと思えてきた。

威圧感。

現に今、言葉は殺されてしまった。

そして申し訳なくなる。


太子が あの視線を引っ込めて、また優しい目をして妹子の手を取った。


「傷…ちょっと開いたな…。…妹子、痛いか?」

「……平気です」


太子の白い手が、血で腕に張り付いた包帯を慎重に解いた。

外気に晒された痛々しい切り傷からジワリと血が滲んでいる。

その傷に、太子が小さく口付けをした。


「!?」


至る所にある傷、一つずつに唇を落としていく。

触れられた所が熱くなる。

傷が疼く。


「太子…駄目です。血が出てるのに…汚いですよ…っ」

「駄目じゃない。駄目なのは妹子の方だろ?」


今度は太子の柔らかい舌が這う。

傷跡を綺麗になぞり、血を拭うように、傷口を労るように舐めていく。

傷を舐められているだけなのに身体が熱かった。

ぞくぞくと痺れる。


「は……ぅ…」


太子の舌が離れる度に はあ、と息を吐く妹子を一瞥して苦笑すると、今度は妹子の腕をそっと持ち上げて、酷く妖艶な仕草で傷を舐め上げた。


「っ…!」

「妹子…駄目だよこんな事しちゃあ……」

「っ太子……ごめんなさい…」


傷に嫉妬して、腕を引っ込めて抱きつくと その意を解したように唇をくれる。

触れるだけのキスをして、太子の後ろに腕を回して密着する。

そろそろもっと深いモノが欲しいと思った。

太子も次のキスで その欲望を満たしてくれる。


「ん……は…っ」

「妹子……」


艶のある、掠れた声で名前を呼ばれる。

太子なりの合図だと思う。

……元より そのつもりだ。


妹子は僅かな隙間も埋めるように寄り添い、太子を受け入れた。




優しい愛撫だとか、言葉だとか、眼差しだとか。

全身で感じる貴方の全てが愛しくて、

離れていくなんて認めたくない。

この幸せが奪われるなんて、許せない……。



――許さない。





*了*




アトガキ




…あれ?
宮田連載でも傷舐めシチュ無かった?



Orz
すみません傷舐めてるの大好きなんです…!
★印を入れるかどうか迷いましたが、まあ傷舐めてチュッチュしてるだけだしイイだろとか思って付けませんでした。
こんなんで付けてたら全話★指定だろ…!笑

それにしてもようやく太子がちゃんと出てきましたね!
わーい太子!
書きにくいけど楽しい太子!
次回は太子視点になる予定です。
書くのワクテカ!
すっごく自己満足!笑


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