恋愛狂騒
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翌朝。
よく眠れなかった僕は最近いつもの事ながら寝不足で、フラフラと仕事場へ向かった。
今日は大切な書簡を取りに行かなきゃいけなかったはず…。
上には赴くけど、太子の所までは行けないだろうな…。
予定通り上官の仕事部屋に行って、書簡を受け取る。
頭を下げて部屋を出たところで、女官とぶつかってしまった。
「うわっ?」
「あ…!お役人様、申し訳ございません!」
落としてしまった書簡を慌てて拾うが、女官は廊下に落ちた上等な着物を見て狼狽えている。
「拾わないの?」
「いえ…一度落としてしまった着物を運んでも失礼です…!だからと言って戻っていては遅いと怒られるし…どうしよう…!」
「ああ…それは確かに」
「どうすればいいのかしら…皇子様に申し訳が…っ」
「……皇子?」
僕は着物から視線を外して女官を見た。
皇子って、厩戸皇子?
太子のこと?
何だかんだで狡賢い僕は、瞬時に妙案を思い付いていた。
「それなら僕が着物を届けようか?それなら君も怒られなくって済むよ」
女官は驚いたように僕を見て、すぐに首を振った。
「いけません!お役人様に用事を押し付けるなんて…。それに貴方は大事なお仕事の途中のようですので…」
そこで僕は書簡のことを思い出した。
「あ……でも…」
こうでもしないと、太子に会えない……。
「それに、皇子様には着物を届けるだけでなく、着付けのお手伝いもして差し上げなくてはならないのです。それは私達女官にしか成せぬことと思いますので、皇子様のところへは私が伺います」
結局一度戻ることに決めたのか、着物を拾い上げて踵を返した女官。
…『私達にしか成せぬこと』?
僕を差し置いて、この女が太子のところへ行くって?
女官の後ろ姿を見つめていると、自分の身体が熱くなっていることに気付く。
素早く視線を落としても変わらない。
沸々と熱くなっていく。
この女が太子に会うって。
太子に
――ユルサナイ
「……く、な…」
声が震える。
「え…?」
振り向いた女官の、何の悪気もない顔が憎い。
憎い…!!
「近付くな……太子に近付くな!」
――ドンッ!
「太子に近付いたら……許さない…許さない…!!」
「…ひ…っ」
カランと、書簡が床に落ちる音がして、急に頭が冷えた。
「………あ」
僕……何やってるんだ…?
気が付けば、女官を壁に追い詰めて、カツアゲしてるみたいなことになっている僕。
「あ…っ、ご、ごめん!あれ…僕、何言って……ごめんね、怒鳴ったりして」
また床に落ちてしまった着物を拾い上げて渡す。
「本当にごめん……大丈夫?」
「はい…大丈夫、です」
女官は呆然としたまま去っていく。
僕も書簡を拾うと、しばらく立ち尽くしていた。
今のは何だったんだろう。
頭がボーッとして、何を言ったのかよく覚えてない。
白昼夢でも見ていたみたいだ。
「………疲れてるのかも」
腕の中の書簡を抱え直すと、僕は何事も無かったように仕事部屋へ戻る道へと足を向けた。
*了*
アトガキ
よ、ようやく妹子に異変が起こり始めましたドキドキ…!!
ヤンデレってどんな感じかな?っていうのがあるので、それを自分なりに感じてみるためにも妹子主観で文章を書いているのですが、なんか妹子うざいな…←
完璧にヤンデレ化するまでは私の苦手なタイプの妹子が続きそうです…orz笑
そして、馬子さんよりも竹中さんを書くのが楽しいことに気がつきました(笑)。
竹中さんは穏やかでいいなぁ^^
またいずれ竹太とか竹妹とか書きたい。
あっ、太竹とかも良くないか…!?
竹中さんはもう結構長く生きてて、太子が小さい頃から青年の姿でお友達だったっていうのが理想です。
実際この小説でもそういう設定なんですが、こう、大きくなった太子が竹中さんを襲って「太子もほんの少し前まではまだ腰ぐらいまでの身長の子供だったのに、今じゃあこんなにオトナになって…vV」みたいななぁぁぁ(*´∀`*)(暴走中)
妹竹とかだとどうなんだろう。
まず妹子が竹中さんを「何この人!?」みたいな目で見てるとこがあるから難しいな…(無理矢理フラグ立てんなwww)
ていうか肝心の太妹についてのアトガキが欠片も無くてすみません(笑)