恋愛狂騒

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「あれ?竹中さん、わざわざ朝廷まで来るの、これで二度目だなぁ」





「それでさー、昨日も結局会えずじまい。寂しいなぁ…。うーん、明日は無理…だけど、明後日こそは会えるかなぁ…」

「………太子」

「ん?どうしたの、竹中さん。そんな深刻そうな顔しちゃってー」



「………イナフを」


「妹子を?」





「独りにしては、いけないよ」



絶対に。





第三章【狂いの転び】





11・予兆



日頃の怠けっぷりを見ているとよく忘れそうになるけど、太子は忙しい。

最近は特に仕事が多いらしく、太子は珍しくちゃんとした服を着て、働かざるを得ないようだった。


たかが五位である僕がこんな多忙なときに太子に会えるわけもなく、太子が仕事をしているので馬子様も僕を呼びに来ない。

僕自身、会いに行く余裕がなかった。

大体、最近は朝廷全体が忙しい感じで、僕も仕事が立て込んでいた。


最初は寂しかったけど、すぐに仕事に意識が向いて何も思わないようになった。

でもそれは多分、きっとそのうち会えると思っていたからなのだろう。


『そのうち』が終わると、僕は急に不安になってきた。


「ったく……何だ?最近のこの鬼のような忙しさはー…」

「本当だよなぁ。下でコレなら上は地獄じゃないか」

「ああ、それがな、上は一段落ついたらしい。だいぶ落ち着いて、今日は穏やかだったって話だぞ」

「有能な上官さまの集まりだものな。仕事が早いのは当然かぁ………あれ、小野?そんな所に突っ立って、どうしたよ?」

「……え、ああ…いや。別に…」


それならどうして太子は僕に会ってくれなかったのか。

廊下の立ち話を聞いて、不意に暗い影が落ちる。


(…きっと太子は今日も忙しかったんだ。摂政だもんな)

(絶対そうだ。僕のことをあんなに好きな太子が僕に会いたがらない訳がない…)


自意識過剰のおかしな確信。

でもそれぐらいに思わなきゃ、訳の分からない苛立ちに飲み込まれてしまいそうだった。

夜はなかなか眠りに就けずにぎゅっと布団を握り締める。

最後に太子に会ったのは、いつだったか。

太子、今何してるんだろう…。

夜中までかかって仕事してるのかな?

手伝いに行きたいな…。

太子の隣にいられたら…。

それとも、疲れきって眠っちゃってるかな?

世話役を僕が引き受けられたら良かった。

「お休みなさい、太子」って言ってあげたい。

「お休み、妹子」って言われたい。

太子も僕みたいに、僕のことを思い出したりしてくれてるだろうか…?


太子のことを想わない時が一瞬もないことに違和感を感じない。

僕はもうこんなにも貴方でいっぱいです。

貴方のことを考えているときが一番幸せ。

会えないと胸が潰れそう……明日こそは会いたいです。

太子――。









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