恋愛狂騒
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「あの馬!!!」
「落ち着いて下さい太子!寝坊した僕にも、今まで仕事を溜めてた太子にも責任があるでしょう!」
「だからって明日の分まで……一発お見舞いせにゃ気が済まん!」
「太子!!」
ぎゅうぅと太子の腕を抱きしめるように掴み、太子を止める。
太子が驚くように僕を見て、溜め息を吐いた。
「んー…まあ、馬子さんにはまた今度チョーク太子スリーパーをお見舞いするとして…」
太子に腕を引かれ、ストンと一緒に座り込む。
「でもまあ、妹子が来たから何でもいいか…」
苦笑する太子の唇が、ふと僕のそれに重なる。
「ねえ妹子………してもいい?」
突然の誘いに肩がビク、と震える。
昼間……窓の外はまだ明るい。
でも僕には、反抗する気なんて全く無かった。
「いいですよ…来て下さい」
「ん…っあ、…はぁっ…」
仕事部屋の床にそのまま押し倒され、固い床と激しく攻めてくる太子に挟まれながら声を上げた。
獣が獲物を食らうように激しくて、おかしくなってしまいそうな快楽が襲ってくるのに、太子の行為は何処か優しくて、甘い。
「あっ…、んぁ…太…子っ」
「妹子……妹子…はぁ、あっ…」
色気が凝縮されたような太子の声。
何度も何度も僕の全てを暴くように突き込まれる太子の雄を、僕はうっとりしながら受け止めていた。
「っはぁ…あ、…あぁっ…!」
「かわいい……妹子…かわいいっ…」
囁く声から、僕の髪を撫でる手から、僕を抱きしめる腕から、僕を見つめる瞳から。
太子の全てから愛を感じる。
僕は愛されているんだと、酔うことができる。
「っは…太子…仕事の、こと」
「ん…っ?」
「……僕に会いたくて、頑張ってくれたんですか…?」
潤んだ瞳で見つめると、太子は律動を止めて僕に口付けを落とした。
「んっ……ふ…」
「そうだけど…?」
「いつもはやらない仕事を、僕に会うためにやったんですよね……?」
太子が僕を見て怪訝な顔をする。
「……妹子、何かあった?ツラそうな顔してる…」
太子の友人だという彼の、冷たい視線が頭から離れないんです。
日常に埋没して、カラクリのように無感情に生きていた頃が怖いんです。
「…平気です、太子…。太子がそばにいてくれるなら、何も…」
「妹子……」
甘えるように抱きつくと、太子がそっと抱き返してくれる。
優しい声が降ってきて、心から安心できる。
僕の居場所はここにある。
太子が愛してくれるならそれでいい。
過去も他人も関係ない…。
太子の首の後ろに腕を回して、太子を見上げる。
「太子、続き…して下さい。僕をもっと、太子でいっぱいにして……」
太子の酔ったような視線。
きっと僕も酔っている。
太子の愛情に酔う。
だから僕も、もっと僕を好きになってくれるように太子を酔わす。
恋の駆け引きも色事の知識も全然無いけど、ただひたすらに太子を求め、尽くすことで愛情を示す。
だから、ほら。
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