恋愛狂騒
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どれだけ泣いていただろう。
ふと、髪に温かい感触があることに気付いた。
「……ねえ、」
真上から降ってきた声に、僕は泣くことも忘れてヒュッと喉を鳴らした。
びく、と肩が跳ね上がる。
怖くて顔を上げられない。
また静かな声が降ってきた。
「今 言ったこと、本当?」
太子の衣服の、布の擦れる音がする。
「………妹子、私のこと、好きなの?」
驚いているような声の調子に、僕は思わず顔を上げる。
「!……太、子…?」
太子の顔は、この薄暗い部屋の中でも分かるほど真っ赤だった。
太子は熱を払うように頭を振って膝を折り、身を屈めた。
太子の視線がすぐそこにある事で、僕の心臓がまた跳ね上がる。
「……隋の使者と、面会をしたよ」
「……はい」
「流石にちょっと不味いかなと思って、その日は真面目に頑張ってみたんだ、そしたら」
「追っかけが……」
僕の声に太子が頷いた。
「みんな私のことなんかカレー臭い ただのオッサンだって言って構ってくれなかったのに、急にあんな事になってさ……分かってたけど、やっぱ嫌だよ」
それで、と太子が呟く。
「もしかしたら……妹子もみんなと同じじゃないかって思って……そう思うと、なんかすごく苦しくなって……ごめんね。妹子は前からずっと、私に構って私を見てくれてたのにね……」
悲しげに微笑む太子の手が僕の髪を撫でてくれた。
「ごめんな、妹子……私も…妹子のことが好きだよ」
「…え……?」
今、何て………?
太子が初めて謝ったとか、そんなのはどうでもいい。
問題はその、後……。
「妹子…好きだよ」
「………ッ!!」
僕は性懲りもなく、また泣いていた。
だって太子が、僕のことを、好きって。
「たっ……た…太子」
「ん?」
微笑んでいるままの太子に、顔が熱くなる。
(あ、あれ?僕…おかしい)
前からずっとおかしいんだけど、本当におかしい。
(た、太子って)
「こんなに……カッコよかった、…っけ?」
「なっ…何だよ失礼な!私はいつだってイケメンだろうが!」
「えっ…あれ?今、僕…声に出してました…?」
「言ったよ!こんなにカッコよかったっけって」
心外だ!と怒る太子を目の前にしても反論出来ない。
顔が熱い。
頭がフラフラしてショートしそうだ。
な…なんで?
視界も涙でぼやけてるけど、これは…羞恥のせいで滲んだ涙だろうか?
僕がぐるぐると混乱している様子を見ていた太子が、苦虫を噛み潰したような顔で ごくっと喉を鳴らした。
「おい……妹子?」
「な…なん…ですか?」
「なんかお前…すっごく、」
「エロいことになってるよ…?」
太子ってオッサンのくせに やたらイイ声してるから。
僕は声を聞いたその瞬間、ついに沸騰した。
*了*
アトガキ
ウチの妹子は太子大好きです、太子も妹子大好きです^^←
なんかすごくおかしな展開になってきてますね、ハイそうです、次回はついにヌルい裏が入ります。
本当にヌルいよ…!!orz笑
【2008/08/05】