恋愛狂騒

□03
1ページ/2ページ




久々に太子に会う僕は、手土産を用意して襖の前にいた。


(出て来ないなぁ…)


実はさっきから何度も太子を呼んでいるのだが、一向に出てくる気配がないのだ。


「はぁ……太子、入りますよー?」


襖を引き、足を踏み入れる。

初めて太子と出会ったときに彼がいた場所を見ても、周りを見ても何処にもいない。


(太子…?)


「………あ…」


いた。




3・墜落




太子は庭に座り込んでいた。

一体 何をしているんだろうか?

妹子は庭に降りて太子の背後に歩み寄った。


「…太子」

「!?」


久々に見る太子の顔は、思わず笑ってしまうような驚きの表情をしていた。


「どうしたんですか?僕がここにいることが、そんなに意外ですか?」

「…妹、子?なんでここに…」

「馬子様に言われたんですよ。太子の所へ行くようにって」

「……ああ…馬子さんが」


太子は顔を顰めた。


「別にお前なんかお呼びじゃないやい」

「じゃあなんで馬子様が僕を呼ぶんですか」

「私が知るか。馬子さんが私を嫌いなの、お前も知ってるだろうに」


確かに、勝手に太子がどう思われているかアンケートまで取って隋に追いやった馬子様だ。


(あれは嫌いって言うか……単にウザがってるだけなんじゃ)


「人選には納得している」と言ったりする辺り、彼も太子の能力は買っていたようだし。


(まあ何でもいいか)


「ところで太子、こんな所で何をしていたんですか?」


そこで、太子が手に持っている物に気付く。


「クローバー…」


見て見れば、今 自分達がいるのはクローバーが群生している所だ。


「クローバーを積んでたんですか、太子?」

「まあな」

「…だったら四つ葉とか探しましょうよ。折角ですし」

「探してるよ!ていうかさっきからずっとそれを探してんだ私はー!」

「あ、そうなんですか」


相変わらず仏頂面な太子が三つ葉のクローバーを振って僕を指す。


「丁度いい、お前も探せ四つ葉を」

「なっ…なんで僕が」

「黙れ!摂政命令だぞ!」

「ったく…」


何だかんだ言いながらも四つ葉のクローバーの捜索が始まった。

溢れる緑の中から探し出すのは至難の技で、昼過ぎに始まった捜索なのに、気付けば陽は落ちかけていた。


_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ