BOOK_AFFENLIEBE

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01・豆腐の中からこんにちは





みんなは、妖精とかそういう類いのものを信じるだろうか。

いきなり結論だけど、妖精は実在する。

しかも、花とか水とかだけじゃなくて、例えば布団の妖精とか、物干し竿の妖精とか、そんな変なものまで存在している。


そんなこんなで、私は豆腐の妖精だ。

名前はいろは。

豆腐の妖精が何をするかと言えば特に何もしないんだけど、最近、こんな風の噂を耳にした。

なんでも、肉より米より野菜より、こよなく豆腐を愛する少年がいるらしい。

これには、豆腐の妖精である私自身、めちゃくちゃ驚いた。

でもその噂は本当だったようだ。


とある町の豆腐屋に潜伏してみたところ、しょっちゅう来ては、ものすごく幸せそうに豆腐を買っていく少年を見つけた。

豊かな黒髪に、やたら白い肌と長い睫毛が特徴的だった。

ボサボサした灰髪の少年を連れている。


「なあ兵助…まだ決まらないのかぁ?」

「もうちょっと待ってくれ…今日は普通の豆腐に決めてたけど、こうして見ると高野豆腐もいいような気がしてきたんだ…」

「高野豆腐って…まさかそれがメインとか…」

「あ?」

「愚問か…」


額に手をやって項垂れる友人をよそに、兵助と呼ばれた少年は「お前は豆腐の美味しさ、素晴らしさ、愛らしさが分かってない!」と熱弁を振るい始めた。

美味しさと素晴らしさはまだ分かるとして、愛らしさって何だろう。

豆腐の妖精である私にも分からない。


「お前、甲斐甲斐しく町に出ていくもんだから女か何かと思ったのにさぁ、豆腐かよ……」

「なんだ、悪いか?」

「いや…お前はそういうの興味ないのか?」

「理想の女性が現れたら別だけど、今はいないし興味がない」


どうやらこの少年は相当豆腐を愛しているようだ。

女の子も目に入らない辺り、ちょっと病気の域に入っている気もするけど、豆腐の妖精からして見れば感心な少年だ。

こんなに豆腐を愛する少年に、是非ちょっとしたご褒美をあげたい!


「おばさーん!この豆腐と高野豆腐、一丁ずつ下さーい」


少年は、なんと結局両方買ってしまった。

お買い物の隙に、私は普通の豆腐の方に飛んでいき、その中に身を隠した。

分かりやすく言うと、豆腐の中に宿ったという感じだろうか。

少年は私憑きの豆腐と高野豆腐の包みを持ち、ルンルンで帰っていった。

着いたのは大きな学園で、彼はその寮部屋に入った。

そして机の上で、私憑き豆腐の包みを丁寧に開け、真っ白な豆腐を見つめた。

目がトロンとしていて、本当に豆腐が大好物だということが窺える。

大好物どころか、まるで豆腐に恋でもしているかのような。

そんなに豆腐が好きか、少年よ。

それなら、魔法で豆腐を出してあげたら喜ぶかな。

よしっ!


私ははりきって頷き、人間にも私が見えるように姿を現した。















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