DZM2
□Nacht
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Nacht
「ん……、……ん?」
目を覚ましたら、そこは見知らぬベッドの上でした。
(え!?)
心地よい眠気からふと意識が浮き上がって、ゆっくりと目を開いた。
辺りは暗くて、横たわる自分の真下には柔らかい布団の感触。
勿論上にも肌触りのいい布団が被せてあるようだ。
ただ、そのどれもが見慣れないものだ。
(あ、あれ!?私、なんで……!)
じっと横たわりながらもパニックに陥って考えた結果、自分の体に触れる布団以外の感触に気が付いた。
温かくて、布団よりはずっと硬い何かが、私の腰からお腹辺りに巻きついている。
(え……)
人の、腕?
そこまで考えて、やっと頭がすっきり覚醒してきた私は全部を思い出していた。
(そうだ、ここ、宮田さんの家だ!)
そうだ、ここ、宮田さんの家の寝室のベッドの上だ。
そして私がここで寝るに至った経緯も思い出して恥ずかしくなった。
(そ、そうだよ、私ここにお泊まりして……!ご飯つくって食べて色々お話して、それでお風呂に入ってから何やかんやでこんなことに……!)
何やかんやとは、何と言うか……早い話が私が無自覚のまま発情したというか欲情したというか、それで宮田さんに自分から襲いかかってキスするというとんでもない行為をして……それで、私がまだ未成年だからと我慢してくれていたらしい宮田さんの理性をブチ壊して、それで、こんな……。
……と、いうことは、私のお腹に回っているこの腕は……横向きに寝ている私の背後に感じるこの気配は……後ろから聞こえてくるかすかな寝息は……。
私は寝転んだまま、可能な範囲で首だけを捻ってチラリと後ろを見た。
そうすれば、予想以上に近い距離に、すやすやと眠る宮田さんがいた。
(うっ、うわあああぁぁ!!)
慌てて首を戻す。
ヤバい。
あと一秒でも長く見ていたら私の心臓が喉の奥から這い出てくるところだった。
暗闇の中でほんの一瞬だけ見た宮田さんの寝顔は、それはもう貴方本当に私より約10歳も年上なんですかと言いたくなるほど可愛いというか……普段の宮田さんの表情が怖いだけに余計に幼く見える。
なんというか、邪気がない。
邪悪なものが何もかも抜け落ちて、残っているとすればそれはすやすやと眠る油断ぐらいなものだという宮田さんの寝顔といったら本当……!
(うわああぁ恥ずかしい!……というか、私、いつの間に寝たんだっけ?)
後ろから宮田さんに抱き締められるという壮絶な状況の中、必死に回想する。
このベッドの上で繰り広げられた恥ずかしいアレソレばかりが記憶として蘇ってくる上、なんだか体にもまるで致している最中のような錯覚が巻き起こってくるが、それでも果敢に回想にトライ!
ああ情けなかったなぁとか恥ずかしかったなぁとか宮田さんカッコ良かったなぁとか宮田さんエロかったなぁとか宮田さん色っぽかったなぁとか宮田さんすごく優しかったなぁとか……違う!!
今は感想はどうでもいい!
宮田さんについてばっかりの感想とか、今はいい!
恥ずかしい!
そうじゃなくて、私があの後どういうタイミングで寝てしまったのかについてだ。
終わった後、私はどうやら寝てしまったか気絶してしまったかしたらしく、宮田さんによると10分ぐらい寝ていたらしい。
それから目が覚めて、水を飲ませてもらって、ちょっとだけ話もして……その後。
恥ずかしくも宮田さんにぎゅーっとしてもらってしまった記憶があるのだが、そこから先を憶えていない。
(……その辺で寝ちゃったのかな、私)
で、宮田さんに後ろから抱っこされたような体勢で寝て、今に至ると。
(何時ぐらいだろう……)
ベッドの脇に小さな時計が置いてあるのを見つけて目を凝らしてみると、“04:02”と表示されているのが分かった。
(夜中の四時かぁ……)
……それにしても。
(時計を見るだけにしても動きづらいな本当……!)
私の腰にぎゅっと巻きついた宮田さんの腕。
ちょっと体を起こして時計を見るのも一苦労だ。
あんまりゴソゴソと動いて宮田さんを起こしてしまうのも申し訳ない。
私は大人しく元の位置に戻った。
(……腰痛い……)
そんなことを思いながら。
それにしても何だろうこの違和感、腰が痛い上に、なんだかその……口で言うのも憚れるあそこに、じんと来る甘い違和感というか……ともすればまだその……入ってるんじゃないかって思ってしまうような感じが……。
何だかもう、恥ずかしくてこのまま寝れる気がしない。
嫌でも最中のことを思い出してしまうし、体は変な感じがするし痛いし、……後ろで寝てる宮田さんが気になるし。
「……」
私はゴクリと息を飲んだ。
……振り向いて……みようか……?
ちょっと体を捩ってみるだけなら宮田さんも起きないだろう。
さっき時計を見たときも起きなかったし、少しぐらいなら大丈夫だろう。
とにかく宮田さんの寝顔を見てみたい。
宮田さんの寝顔は今までにも何度か見たことがあったけど、こんな近くでじっくり見れる機会なんてなかったし……。
私は意を決すると、ごそごそと体を動かして30秒ぐらいを要してやっと宮田さんの方を向いた。
宮田さんが起きる様子はなく、セーフ……なんて小さく息を吐こうとした瞬間、布団の隙間から覗く宮田さんの上半身に目が行った。
ワイシャツの前ボタン、開いてます。
(セクシーだ……!!)
頭を抱えたくなった。
こんなふうに宮田さんに抱っこされてなければ私、確実に“orz”の体勢になれたよ……!
なんてエロい生命体だろう……学名は何ですか?
宮田司郎?
宮田さんは男性としてこんなに魅力的なのに、それに比べて私のがっかり体型ときたら……と、布団に隠れて見えない自分の体が有する胸や腕や足やお腹周りのことを思いながら泣きたくなった。
でも、今は自分のことはどうでもいい。
とにかく今は宮田さんの観察だ。
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