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週明け、沙織にクッキーを持っていくと、沙織はすごく喜んでくれた。
「いろはが焼いたの!?え、コレ食べれるの?」
「失礼な!ちゃんと味見もしたし、大丈夫だよ!」
「うそうそ、冗談よ!本当にありがとね!!」
眩しいくらいの笑顔を見せてくれた沙織に「心配かけちゃったお詫びだよ」と言うと、沙織は私の顔を見つめて頷く。
「だいぶ元気になったみたいね…良かった」
「うん、ありがとね、沙織」
「いいのよ!このクッキーだって嬉しいけど、そんなこと気にしなくて良かったんだから」
でも沙織にはいつもお世話になってるし…たまには、ね。
そう思っていると、沙織が何かを思い出したように鞄を漁り出した。
「ねえいろは、DVDとか見ない!?」
「え?DVD?」
「ホラー好きの友達に勧められて見たら本当に怖くって!いろはにもこの恐怖を味わってほしいのよ!!」
押しつけられたDVDに戸惑いながら沙織を見ると、沙織はすっごく興奮した様子でそれを渡してくる。
「でも又貸しとか、その人に悪いんじゃ…」
「あー気にしない気にしない、そいつには許可貰ってるから」
その時チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたので、私は渡されたDVDを沙織に返せないまま席についた。
(ホラー映画、か……)
確かお兄ちゃんがホラーとかアクションとかそういうの好きで、わりと見てるらしいけど…私はあんまり見ないなぁ。
ちっちゃい頃はお兄ちゃんの後ろに隠れたりしがみついたりして、お兄ちゃんに「暑いんだけど…」とか苦笑されながらギュッと目を瞑ってたのを覚えている。
最近は全然ホラー映画を見てないから、そういうのもないけど。
(たまには、いいかも)
私は小さく頷いた。
明日は祝日で学校が休みだ。
確か親は出かけるって言ってたし、宮田さんを母屋に呼んで一緒に見てもらおう。
(うん、一人は怖いからね!!)
「ホラー映画…ですか」
「そうなんです!昨日、学校で勧められたんですけど…一人で見るのはちょっと怖いので、一緒に見てもらってもいいですか?」
祝日の昼間、離れに押し掛けて宮田さんにそう言うと、宮田さんは読んでいた分厚い本を閉じて考え込んだ。
「ご家族は…?」
「みんな何処かしらに出かけてていないんです。だから、宮田さんもたまには母屋に来てもらって……駄目ですか?」
宮田さんは私から視線を逸らして何か考えてたみたいだけど、ふと目を閉じると本を置いて立ち上がった。
「…構いませんよ」
「やった!ありがとうございます、宮田さん!」
離れを出て母屋に向かいながら、宮田さんが訊いてくる。
「どういう話なんですか?」
「分からないです…けど、洋画ホラーで、CGとか駆使したすごい作品らしいです」
「…CG」
宮田さんは何か納得したように小さく頷いた。
「それで、そんなものを見て大丈夫なんですか」
「え……私ですか?」
「肝心な所で目を瞑っているようでは意味がないと思いますが」
「うっ!」
む…昔の話…だよね!?
私もちょっとは成長したと思うし、きっと大丈夫だ!!
「大丈夫ですよ、宮田さん!昔はちょっと怖がりでしたけど、もう大丈夫です!………たぶん」
宮田さんは苦虫を噛み潰したような顔になった。
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