DZM1

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カラカラと離れの玄関扉を開けると、いろはの兄の丸い背中が視界に飛び込んできた。

彼は扉が開く音を聞きつけてパッと振り返る。


「おい、いろははっ?」


二言目には“いろは”だ、何という妹への愛。

以前、彼に神代淳を重ねて呆れたものだが、これはもしかしたら淳以上かも知れない。

宮田は一、二度瞬きをして息を吐くと、「中にいますよ」と答えた。


「足を怪我していたから、これから救急箱をもらいに行くところなんです」

「ああ…これの破片が刺さったのかな」


兄の足元には片付けられた食器の破片がある。


「分かった。俺が取ってくるよ。だからアンタがいろはを手当てしてやってくれ」

「…はい」


破片の入ったビニール袋を持って踵を返し、パタパタと入っていく後姿。


(………急に大人しくなったな)


宮田は驚いて眉を寄せ、小首を傾げる。

するとその心の声に反応したように兄が急に振り向き、ビニール袋の中身をガチャガチャ言わせて叫んだ。


「べっ、別に認めたわけじゃねえんだからな!いろはが言うから仕方なく…っ!いろはを泣かしたらブッ飛ばす!!」

「………」


兄は何一つ変わっちゃいなかった。

呆気に取られた宮田は、我に返るとふんぞり返ってニヤリと笑ってやった。


「ご自由にどうぞ」

「ムッカーーーー!!」


バタン!と乱暴に閉まる母屋の扉。


(なるほど、からかうと面白い反応が返ってくるところでは兄妹でそっくりだな)


食器の破片があった場所を見下ろすと、暗闇の中に更なる黒ずみが見てとれる。

腰を下ろし、土をなぞると生暖かい感触。

…いろはの血だ。


(………赤い、)


見上げると、澄んだ星空に白い月。

赤い雨が降ったのは、この空からなのだろうか?


(………違うか)


同じに見えても、ここは常世だ。

でも、もしかしたら…。

頭がこんがらがる。


宮田は顔を顰めると、立ち上がった。

丁度運ばれてきた救急箱を受け取り、踵を返す。


「………二度目の人生、か」










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