DZM1

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カラ、と自分が可能な限りの小さい音で保健室の扉を開けた私は、そっと、本当にそーっと中を覗き込んだ。


「…し、しつれい、しまーす…」


電気は付いてるのに、誰もいない…?


「いないんだ…」


職員室に行って他の先生に言おうかと思い、ほっと息を吐いた。


「そこで何をしてるんですか」

「ひえええええッ!?」


や、やだ、私ったら何て奇声を!!


慌てて振り向くと、そこには…。


「みや…み、みやた、さん」

「大声を出さないで下さい。…まあ、今は誰もいませんが」

「なんで…いるんですか………」


宮田さんは五月蠅そうに顔を顰めて耳を押さえていたけど、手に持った書類を軽く上げてみせる。


「職員室に少し用事があったんですよ」

「そういう意味じゃないです!なんで、なんで…!」

「言いませんでしたか。私の本職は医者ですから。応用ですよ」

「………」


全く会話が成り立ちません。


宮田さんは机に戻るとキャスター付きの椅子に座って私を見た。


「…居候として世話になっているだけでは悪いと思ったんですよ。貴女に忘れ物を届けた日に保険医が産休を取るという話を耳にしたので」

「そうだったんですか…」


じゃあ最近やたら外出して家にいなかったのも、そういう事…?


その時、一限目開始のチャイムが鳴った。


「…それでだ。今日はどうしたんですか?」

「あ…えっと…」

パイプ椅子を指されたので大人しくそれに座る。

改めて見ると、宮田さんは白衣を着ていた。

初めて見る姿だ。


「そうやって見ると…本当にお医者さんですね…」

「まあ、これが本職ですから」


白衣に薄い水色のブラウス、ズボンは今までと大した変わりはないけど…新鮮だ。

そんでもって、新鮮なのによく馴染む。


「…そんなに白衣が珍しいですか」

「…あ。い、いえ!すみません…!」


つい呆けて見ていた私はハッとして首を振る。


「えっと…その、紙で指を…切っちゃって…」


ティッシュでぎゅっと押さえていた指は今や血でダラダラだ。

慌てて血を拭き取る私の指を宮田さんが覗き込んだ。



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