DZM1
□03
1ページ/5ページ
奥山いろは
東京23区/奥山家離れ
初日/20時43分24秒
大勢で食事するのには慣れてないみたいで、宮田さんの食事はお母さんが離れに運んでいった。
随分時間も経ったからそろそろ食べ終わっているはずだ。
お母さんに「食器貰ってきて」と言われて離れにやってきた。
コンコンと玄関の扉をノックして取っ手に手をかけてみると、それはすんなりと開いた。
鍵をかけてなかったのがちょっと意外だったけど、私は構わず中に上がりこんでリビングへ向かう。
「……あれ?」
いない。
食器はまとめて流しに置いてあった。
ここで洗うつもりだったのかな…と思ったが、ちゃんと後で回収しよう。
ところで宮田さんは何処に行ったのだろう。
私は廊下に出て左右を見る。
トイレもお風呂も電気は付いてない。
和室にもいない。
…二階?
二回にはベランダと何もない和室が一室しか……。
(あ、もう一つあった)
亡くなった祖父の書斎だ。
もしかしたらと思って階段を上がり、書斎の扉をノックすると中から物音がした。
扉を開けると、そこには白色のブラウス姿の宮田さん…あのスカートのような黒服は畳んで置いてあった。
分厚い本からこちらに目を移した宮田さんに、思いっきり肩が跳ね上がってしまった。
カッコいい、…なんて、思ってしまった。
顔が火照るのを手の冷たさで必死に下げながら話しかける。
「あ、あの、宮田さん、ここにいたんですね…」
「ああ…勝手に入ってすみません。興味があったもので。出て行ったほうがいいですか」
「いっ、いえ!全然いいです!誰も使ってないので、お好きなように…!」
すごい。
私なんか、こんなところにいたら眠くなっちゃうのに…。
宮田さんは医者だし…やっぱ知識欲とかそういうのが豊富なんだと思う。
「宮田さん、下にある食器、母屋に持って行きますね。それから、何か不自由はないですか?欲しい物があったら親に言ってみます」
宮田さんは顔を上げて少し考えたけど、すぐに首を横に振った。
「特に問題はありませんよ」
「そ…そうですか」
それでは失礼します、と、いそいそ帰ろうとすると、宮田さんがパタンと本を閉じた音がした。
「あの」
呼び止められた。
「はっ、はい!何ですか!?何かありましたかっ?」
やけに緊張して声に動揺がありありと現れ、振り向きざまに壁や本棚にぶつかるという悲惨さ。
それを見ても宮田さんは何も言わないので余計にツラい、どうせなら一思いに笑ってくれた方が救われるのに…。
宮田さんは立ち上がって静かに呟いた。
_