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奥山いろは
東京23区/奥山家離れ
初日/20時43分24秒





大勢で食事するのには慣れてないみたいで、宮田さんの食事はお母さんが離れに運んでいった。


随分時間も経ったからそろそろ食べ終わっているはずだ。

お母さんに「食器貰ってきて」と言われて離れにやってきた。


コンコンと玄関の扉をノックして取っ手に手をかけてみると、それはすんなりと開いた。

鍵をかけてなかったのがちょっと意外だったけど、私は構わず中に上がりこんでリビングへ向かう。


「……あれ?」


いない。

食器はまとめて流しに置いてあった。

ここで洗うつもりだったのかな…と思ったが、ちゃんと後で回収しよう。


ところで宮田さんは何処に行ったのだろう。


私は廊下に出て左右を見る。

トイレもお風呂も電気は付いてない。

和室にもいない。

…二階?

二回にはベランダと何もない和室が一室しか……。


(あ、もう一つあった)


亡くなった祖父の書斎だ。


もしかしたらと思って階段を上がり、書斎の扉をノックすると中から物音がした。

扉を開けると、そこには白色のブラウス姿の宮田さん…あのスカートのような黒服は畳んで置いてあった。


分厚い本からこちらに目を移した宮田さんに、思いっきり肩が跳ね上がってしまった。


カッコいい、…なんて、思ってしまった。


顔が火照るのを手の冷たさで必死に下げながら話しかける。


「あ、あの、宮田さん、ここにいたんですね…」

「ああ…勝手に入ってすみません。興味があったもので。出て行ったほうがいいですか」

「いっ、いえ!全然いいです!誰も使ってないので、お好きなように…!」


すごい。

私なんか、こんなところにいたら眠くなっちゃうのに…。

宮田さんは医者だし…やっぱ知識欲とかそういうのが豊富なんだと思う。


「宮田さん、下にある食器、母屋に持って行きますね。それから、何か不自由はないですか?欲しい物があったら親に言ってみます」


宮田さんは顔を上げて少し考えたけど、すぐに首を横に振った。


「特に問題はありませんよ」

「そ…そうですか」


それでは失礼します、と、いそいそ帰ろうとすると、宮田さんがパタンと本を閉じた音がした。


「あの」


呼び止められた。


「はっ、はい!何ですか!?何かありましたかっ?」


やけに緊張して声に動揺がありありと現れ、振り向きざまに壁や本棚にぶつかるという悲惨さ。

それを見ても宮田さんは何も言わないので余計にツラい、どうせなら一思いに笑ってくれた方が救われるのに…。


宮田さんは立ち上がって静かに呟いた。








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