ボカロ日和

□02
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閻魔は鬼男をぼんやり眺めながらふと妄想する。

目の前の、2ちゃんによくあるスレ的な…“ボカロ06の鬼男は角を生やした色黒カワイイ”な感じの彼が「大王大好きー!」とかフル笑顔で言ってくれたら。


「ぶッ!!」

「大王?どうし……うわあぁ何いきなり鼻血噴いてんだテメー完璧変態だろ!!このパーフェクト変態がアァァ!!」

「も、もっと優しく…でももっと罵って…!」

「気持ち悪いわアアアァ!!!」


ついにパソコンのディスプレイ前に沈んでしまった閻魔を見て、デスクトップ端っこに縮こまりつつ辛辣な言葉を吐いてくる鬼男。


「とりあえずその鼻血止めて下さい!何があったって言うんですか!」

「いやちょっと…ヘヴンを見てきた…俺もうヘヴン状態…?」

「………」


それっきり鬼男は何も言わなかったが、閻魔はその間にティッシュを駆使して鼻血を止める。

ようやく鼻血が治まってもう一度ディスプレイ前に座ると、鬼男が遠慮がちに訊いてきた。


「……大王、彼女とかいるんですか?」

「ん?彼女……カノジョ!?急にその話題何ソレ!?」


話の飛びようにビックリしたが、「いいから答えて下さい」と言われて首を捻る。


「うーん、いないなァ……そう言えばもう結構長いこといない。あれ?俺ってこんなに寂しかったの!?泣いていい?」

「勝手に思い出して勝手に泣くなよ…。どうせ大王の性癖に困って逃げ出すんでしょう?」

「な、何を言う!俺だって空気は新聞くらいには読めるんだぞ!?こう、この子には言っても大丈夫かなーとかそういうのをだな…」

「そのわりに僕には普通に言ったじゃねえか!嘘吐くな!」

「えぇっ!?確かにそうだけど!だってなんか鬼男くん見てたら我慢できなかったんだもん!」

「男がだもんとか言うな気持ち悪い!アンタの相手するのホント疲れます…!」


鬼男が溜め息を吐きながら言うと、閻魔がパチパチと目を瞬いた。


「………疲、れる…?」

「はい?」

「俺の相手……疲れる…?」

「ど、どうしたんですか急に…」

「ちょッ鬼男く…俺のこと見捨てないでーー!!?」

「ギャアァァいきなりディスプレイに迫ってくんなこの野郎!近い!!」


鬼男がそう叫んだのと、なんかスピーカーからザクッとか聞こえたのはほぼ同時だった。


「………ざく?」

「あ、しまった。つい爪が…」


閻魔が見ると、鬼男の爪が伸びてすぐそこにあったデータフォルダを突き刺していた。


「ちょ…ええぇぇそれ俺の大切な〇△×□%&@!?ていうか何その爪!?」

「すみません、なんかこういう機能なんです僕」

「機能!?ボーカロイドにそんな機能必要か!?」


泣く泣くフォルダをゴミ箱送りにすると、鬼男がそれを見て少し申し訳なさそうにする。


「あの…すみません。フォルダ壊すなんて…」

「あ、ああ…多分職場に複製データがあったと思うから…うん。俺こそ驚かせてごめん。爪が伸びるほどビックリするとは思わなくて…」


何というか、全体的に気まずくなって閻魔が沈黙すると、鬼男が呟いた。



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