ボカロ日和
□02
2ページ/3ページ
閻魔は鬼男をぼんやり眺めながらふと妄想する。
目の前の、2ちゃんによくあるスレ的な…“ボカロ06の鬼男は角を生やした色黒カワイイ”な感じの彼が「大王大好きー!」とかフル笑顔で言ってくれたら。
「ぶッ!!」
「大王?どうし……うわあぁ何いきなり鼻血噴いてんだテメー完璧変態だろ!!このパーフェクト変態がアァァ!!」
「も、もっと優しく…でももっと罵って…!」
「気持ち悪いわアアアァ!!!」
ついにパソコンのディスプレイ前に沈んでしまった閻魔を見て、デスクトップ端っこに縮こまりつつ辛辣な言葉を吐いてくる鬼男。
「とりあえずその鼻血止めて下さい!何があったって言うんですか!」
「いやちょっと…ヘヴンを見てきた…俺もうヘヴン状態…?」
「………」
それっきり鬼男は何も言わなかったが、閻魔はその間にティッシュを駆使して鼻血を止める。
ようやく鼻血が治まってもう一度ディスプレイ前に座ると、鬼男が遠慮がちに訊いてきた。
「……大王、彼女とかいるんですか?」
「ん?彼女……カノジョ!?急にその話題何ソレ!?」
話の飛びようにビックリしたが、「いいから答えて下さい」と言われて首を捻る。
「うーん、いないなァ……そう言えばもう結構長いこといない。あれ?俺ってこんなに寂しかったの!?泣いていい?」
「勝手に思い出して勝手に泣くなよ…。どうせ大王の性癖に困って逃げ出すんでしょう?」
「な、何を言う!俺だって空気は新聞くらいには読めるんだぞ!?こう、この子には言っても大丈夫かなーとかそういうのをだな…」
「そのわりに僕には普通に言ったじゃねえか!嘘吐くな!」
「えぇっ!?確かにそうだけど!だってなんか鬼男くん見てたら我慢できなかったんだもん!」
「男がだもんとか言うな気持ち悪い!アンタの相手するのホント疲れます…!」
鬼男が溜め息を吐きながら言うと、閻魔がパチパチと目を瞬いた。
「………疲、れる…?」
「はい?」
「俺の相手……疲れる…?」
「ど、どうしたんですか急に…」
「ちょッ鬼男く…俺のこと見捨てないでーー!!?」
「ギャアァァいきなりディスプレイに迫ってくんなこの野郎!近い!!」
鬼男がそう叫んだのと、なんかスピーカーからザクッとか聞こえたのはほぼ同時だった。
「………ざく?」
「あ、しまった。つい爪が…」
閻魔が見ると、鬼男の爪が伸びてすぐそこにあったデータフォルダを突き刺していた。
「ちょ…ええぇぇそれ俺の大切な〇△×□%&@!?ていうか何その爪!?」
「すみません、なんかこういう機能なんです僕」
「機能!?ボーカロイドにそんな機能必要か!?」
泣く泣くフォルダをゴミ箱送りにすると、鬼男がそれを見て少し申し訳なさそうにする。
「あの…すみません。フォルダ壊すなんて…」
「あ、ああ…多分職場に複製データがあったと思うから…うん。俺こそ驚かせてごめん。爪が伸びるほどビックリするとは思わなくて…」
何というか、全体的に気まずくなって閻魔が沈黙すると、鬼男が呟いた。
_